サブスク/役務の未収対策(“履行基準×検収×請求設計”)

サブスク/役務の未収対策(“履行基準×検収×請求設計”)

モノと違い、サービスは見えづらい。だからこそ、履行(Performance)と検収(Acceptance)を明文化し、 請求タイミングと停止ルールを先に設計することが回収率を決めます。本稿は、サブスク・準委任・請負に通用する 実務フレームをテンプレート化します(#58/#63/#66と連動)。

全体像:未収を生む構造と設計原則

  1. 曖昧な成果定義:「頑張る」「支援する」等 → 測定可能なKPI/出力物に置換。
  2. 請求の遅延:月末締め依存 → 前受/早期請求/自動引落へ転換。
  3. 停止ルール不在:未収でもサービス継続 → 期限+◯日で自動停止を契約化。
  4. 責任分界の不明瞭:客先都合で遅延→中間検収みなし受入条項で回収を守る。

履行基準と受入基準(SOW/SLA)

成果定義(アウトプット/アウトカム)

  • アウトプット例:納品物(レポート/設定/コード/ダッシュボード)と受入基準の明記。
  • アウトカム例:KPI(到達値/改善幅)と依存条件(データ提供・協力)を明記。

SLA/サービス仕様

  • 稼働時間・応答/復旧SLA、変更リードタイム、保守範囲、除外事由。
  • 障害時のサービスクレジット(上限・控除方法・相殺可否)。

検収条項

  • 明示検収:提出後◯営業日で合否通知、未通知はみなし合格
  • 段階検収:マイルストーンごとに中間受入、遅延は責任分界に応じて調整。

請求設計(前受・マイルストーン・従量・サブスク)

モデル適用例請求タイミング未収抑止のキモ
前受(Advance)初回導入/短期案件契約締結時に30〜100%着手は入金確認後。返金条件と中止精算を明記
マイルストーン請負/導入プロジェクト要件確定/設計完了/本番化 等各段階の検収基準みなし受入条項
従量課金(Usage)API/運用BPO月次締め+翌月請求計測方法・監査権・最小課金上限
サブスク(定額)SaaS/保守支援前払い(月/四半期/年)自動更新と解約期限、未払時停止の明記
プリペイド/クレジット広告/クラウド/稼働制チャージ時残高閾値で自動補充、不足時は自動停止

与信・前受・停止/再開ルール

  • 与信:#58のスコアでA/B/C区分。Bは一部前受、Cは前受/クレカ/保証。
  • 前受:初回は最低1か月分、年契約は年一括前払いを基本。
  • 停止:期日超過+2営業日で通知、+7営業日で機能停止/アカウント停止(重要機能はグレースあり)。
  • 再開:全額入金確認+再開手数料(任意)で復旧。データ保持期間を約款に明記。

オペレーション:検収・計測・請求・消込

検収/計測

  • 成果物は検収リクエストを電子送付(#63)。◯営業日未回答=みなし受入
  • 従量は計測ログを自動添付(APIコール/工数/稼働)。

請求/決済

  • 請求書は案件IDでPO/検収/計測ログに紐付け、電子請求+自動引落(口座/カード)を標準。
  • 年額は前払い割引を設定。増枠/オプションは即日課金。

消込/照合

  • 入金遅延は自動アラート→#66のテンプレで書面督促→内容証明へ。
  • クレカ失敗はリトライ回数・間隔を標準化(例:0, 3, 5日)。

督促〜エスカレーション(役務向け)

  1. 期日当日:自動通知+決済リンク。計測ログ/検収記録へのリンクも提示。
  2. +2営業日:書面督促(停止予告)。次回提供は入金確認後に限定。
  3. +7営業日:アカウント停止または機能縮退。分納合意(#66)を提示。
  4. +14営業日:内容証明→保全(債権譲渡通知/仮差押等)を検討(#65/#66)。

ダッシュボードとKPI

  • 回収:サブスク回収率、失敗課金率、督促解消リードタイム、解約率(Gross/Net)。
  • 運用:検収期限遵守率、みなし受入率、従量ログ添付率。
  • 与信:前受比率、停止件数、再開率、与信枠使用率。

よくある失敗と回避策

  • 「成果が主観」:成果定義が感想文 → KPI/出力物/期日で客観化。
  • 検収未合意のまま開始:請負/導入はマイルストーン検収を先に設計。
  • 未払でも継続提供:停められないSLA → 停止/再開条項とオペを標準化。
  • 従量の不信:計測がブラックボックス → ログ開示・監査権・第三者検証を明記。

チェックリスト

  • SOWに成果定義・受入基準・責任分界・変更手順が明記されている
  • 請求モデル(前受/マイルストーン/従量/サブスク)が契約条項と一致している
  • 未払時の停止/再開ルールと例外承認が運用されている
  • 従量の計測方法・ログ開示・監査権が定義されている
  • 督促〜内容証明〜保全のタイムラインがテンプレ化されている
  • 回収KPI(回収率/失敗課金率/解約率/検収遵守率)がダッシュボード化されている

FAQ

Q. サブスクは月払いと年払い、どちらが未収に強い?

年払い(前受)が回収率は高い一方、解約障壁が上がります。ハイリスク先は年払い、拡大型は月払い+自動引落+失敗時リトライで運用を。

Q. 検収の合意が遅れる場合の打ち手は?

みなし受入条項と中間検収を組み込み、提出後◯営業日で自動合格。顧客都合の遅延は、最終検収前でも中間請求を認める規定を入れます。

Q. 従量課金のトラブルを避けるには?

計測式とログの開示、第三者検証の権利、最低/上限課金、超過時の通知・自動停止などを契約に入れ、月次でログを添付して請求します。

ご相談・支援メニュー

  • SOW/SLAテンプレ(成果定義・受入基準・変更手順・みなし受入)整備
  • 請求モデル(前受/マイルストーン/従量/サブスク)と与信・停止ルール設計
  • 電子検収・従量ログ連携・自動課金/督促フローの構築
  • #58/#63/#66と連動した役務回収オペレーションの標準化

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本記事は一般的な情報提供です。契約・請求・停止運用は業種/商材/法域により異なります。自社実態と最新の一次情報を確認のうえ実装ください。

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Shige