下請法・支払サイト適正化で強い取引関係を作る実務

下請法と支払サイト適正化で「強い取引関係」を作る実務

価格転嫁や支払条件をめぐる齟齬は、取引コストとレピュテーションを蝕みます。本稿では、60日以内の支払3条書面受領拒否/支払遅延/減額/返品/買いたたきの禁止といった下請法の要点を、 日々のオペレーション(契約・検収・請求・支払・例外承認)に落とし込みます。

全体像:適正取引の設計図

  1. ルールの定義:支払期日(60日以内)、3条書面、例外承認、是正手順を明文化。
  2. 現場への落下:契約・PO・検収・請求・支払の各タスクに責任者/期日/KPIを付与。
  3. モニタリング:サイト分布、遅延率、減額件数、返品率、苦情件数をダッシュボード化。
  4. 是正の即応:警告→原因究明→是正→再発防止(様式化)を30日以内に完結。

下請法の基本(適用関係・主な禁止行為)

  • 適用関係:資本金規模や取引形態(製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託)により親事業者/下請事業者が決まる。
  • 主な禁止:
    • 受領拒否の禁止
    • 下請代金の支払遅延の禁止(受領日から60日以内の支払)
    • 下請代金の減額の禁止
    • 返品の禁止(瑕疵等の正当理由を除く)
    • 買いたたきの禁止(不当な低価格の強要 など)

支払サイト適正化(60日以内・現金化配慮)

  • 支払期日:検収の有無にかかわらず、受領日基準で60日以内に設定。
  • 支払手段:現金支払を基本。手形・電子記録債権・一括決済方式を用いる場合は、サイト60日以内、割引料等のコストは価格交渉で明示。
  • 運用変更:社内基準(標準サイト、例外上限、割引料明示)を調達要領・取引基本契約に反映。

3条書面・検収・記録の要件

  • 3条書面:委託日、給付内容、数量、単価、納期、検収、支払期日・方法等を記載し交付。
  • 給付内容変更:追加コストが発生する変更は、変更記録として保存。
  • 検収基準:受領拒否・瑕疵返品の線引きを仕様書に明記し、証憑(納品・検収記録)を電子保管。

オペレーションへの落とし込み

調達・契約

  • 基本契約に「60日以内の支払」「サイト上限」「割引料明示」「例外承認」を条文化。
  • PO発行時に支払期日/手段検収条件を必須項目化。

受入・検収

  • 受領日を自動刻印、検収合否は48時間以内に通知。受領拒否は理由と証拠を添付。

請求・支払

  • 請求突合(3点照合:発注・納品・請求)を自動化し、支払遅延ゼロをKPIに。
  • 例外(分割支払/返品/減額)の承認ログ通知書式を標準化。

監査チェックリスト&是正フロー

  • 支払期日が受領日から60日以内に設定されているか(標準サイト・例外上限)。
  • 3条書面の交付率と、仕様変更の記録取得率。
  • 受領拒否・返品・減額・買いたたきに該当する運用が無いか(証跡確認)。
  • 手形/電債のサイトと割引料の明示・合意(現金化負担の考慮)。
  • 違反疑義発生時の是正:通知→協議→支払/返還→再発防止の完了期限。

よくある失敗と回避策

  • 検収未完了を理由に期日未設定:受領日基準で期日を切る。検収は別ワークフローへ。
  • 「一律値下げ」通達:合理的根拠のない一律引下げは買いたたき/減額リスク。コスト根拠を提示し協議へ。
  • 返品の乱用:瑕疵の立証や期限管理が曖昧だと違反リスク。仕様と検収基準を事前明確化。

FAQ

Q. 支払期日は検収完了後に設定してよい?

検収の有無にかかわらず、受領日から60日以内に支払期日を設定するのが原則です。

Q. 手形や電子記録債権での支払いは可能?

可能です。ただしサイトは60日以内、現金化に伴うコスト(割引料等)も考慮して条件を明示・合意します。

Q. 口頭発注で作らせてしまった。書面が無いとどうなる?

3条書面の交付義務違反に加え、状況によっては受領拒否等にも該当するリスクがあります。直ちに書面化・記録化を行いましょう。

ご相談・支援メニュー

  • 「60日以内支払」準拠の契約/PO/検収/支払プロセス設計
  • 3条書面・変更記録・通知書式テンプレ整備(電子契約対応)
  • ダッシュボード(サイト分布、遅延率、返品/減額件数)構築
  • 社内監査・是正プログラム(教育・監査・是正)設計

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Shige