与信と価格改定の連動オペ(指数連動×条件付出荷)
与信と価格改定の連動オペ(指数連動×条件付出荷)
与信と価格は別レバーではない。資金制約が強まる局面では、与信スコア/枠と 価格改定(指数連動・為替レンジ・サーチャージ)を同時に動かすことで、粗利と回収を同時に守れます。 本稿は、#58与信/#71契約/#74出荷判定/#76相殺統制と接続し、現場で回る連動オペを設計します。
全体像:設計原則
- 二軸管理:支払能力(与信)と売価妥当性(価格)を同一ダッシュボードで管理。
- 信号連動:#73のEWS(赤/黄/緑)が変化したら、価格式・サイト・出荷条件に自動反映。
- 契約先行:#71のMSA/個別契約に指数連動式・為替レンジ・自動適用条項を内蔵。
- 例外は期限付:価格据置や長期サイトは満了日・量条件・前受/担保をセットで。
指数連動・為替レンジの設計
指標の選定
- 原材料指数(例:鋼材/樹脂)、運賃指数、電力/燃料、為替(TTM)。
- 参照頻度:月次/四半期。情報源と発効ラグを契約化。
レンジとトリガー
- ±5〜10%でサーチャージ/ディスカウントを自動発動。
- レンジ外が連続n期間で恒久改定(見直し協議)へ。
適用単位
- SKU/品目単位、案件単位、顧客セグメント単位のいずれかを標準化。
与信×価格の連動ルール
| 与信状態 | 価格・条件 | 出荷判定(#74) | 備考 |
|---|---|---|---|
| A(健全) | 通常価格。指数レンジ内は据置。 | 緑=自動放流 | サイト標準、相殺は契約通り(#76) |
| B(注意) | サーチャージ自動適用(材料/運賃/為替)。 | 黄=レビュー。条件付出荷(部分前受/サイト短縮)。 | 次回更新で価格式を再校正 |
| C(高リスク) | サーチャージ+価格見直し、または代替仕様提案。 | 赤=ホールド。前受/担保で解除。 | 停止時はPO分割で影響最小化 |
ワークフロー(見積→契約→出荷→請求)
- 見積:指数・為替の最新値を自動差込、サーチャージ行を分離表示。
- 契約:#71の価格改定条項(指数連動/レンジ/通知/発効ラグ)を明記。
- 受注:与信判定(#74)で色付け。黄/赤は見積条件(サーチャージ/サイト短縮/前受)を自動提示。
- 出荷:赤は自動ホールド。条件充足で解除。黄は条件付承認の必須項目(割合・期限・金額)。
- 請求:請求書はサーチャージを別行で表示し、根拠指標・期間を明示。
- 清算:サーチャージは月次ネットティング(#69)で控除/相殺可(契約で事前合意)。
算式テンプレ(サーチャージ/割戻し)
| 項目 | 式 | 備考 |
|---|---|---|
| 材料サーチャージ | 基準単価×材料構成比×(現行指数/基準指数 − 1) | 構成比はSKU別固定 or 半期見直し |
| 運賃サーチャージ | 出荷単価×物流比率×(現行指数/基準指数 − 1) | 燃料調整金と分離して表示可 |
| 為替サーチャージ | (為替基準値−実勢)×通貨感応度 | レンジ外のみ適用、四半期清算(#62) |
| 割戻し(レンジ内復帰) | サーチャージ額×復帰期間分の比率 | 自動で相殺または次回請求で控除 |
コミュニケーション・テンプレ
- 改定予告:「◯月度指数が基準比+7.2%のため、翌月納入分から材料サーチャージを適用します(式・構成比・適用期間を明記)。」
- 黄信号の条件提示:「与信ランクBのため、前受30%またはサイト短縮(翌月15日)で継続可能です。」
- 赤信号の停止通知:「与信ランクC+期限超過7日。入金確認またはSBLC受領で即時解除します。」
- 割戻し通知:「指数がレンジ内に復帰したため、前回サーチャージの◯%を次回ご請求で控除します。」
ダッシュボードとKPI
- 価格×回収:サーチャージ適用額、粗利率、回収率、DSO、期限超過率。
- 与信:枠使用率、EWS赤黄比率、条件付承認の履行率。
- 運用:改定通知リードタイム、異議率、ネットティング相殺率(#69)。
- 顧客別P/L:サーチャージ・値引・チャージバック(#76)を含む真の粗利を顧客別に可視化。
よくある失敗と回避策
- “値上げ=関係悪化”の恐れ:式と根拠を公開し、割戻しも対にして信頼を確保。
- 据置の恒常化:戦略顧客の例外が常態化 → 期限・量条件・前受/担保を必須化し、満了で自動失効。
- 回収との分断:価格改定が出荷停止ルールと連動せず回収悪化 → #74の判定APIに価格条件をシグナル化。
- 相殺の暴走:サーチャージを一方的に控除 → #76の相殺統制で事前承認とネットティング限定。
チェックリスト
- 指数連動式・為替レンジ・発効ラグが契約条項化されている
- 与信ランク(A/B/C)で価格・サイト・前受/担保の標準メニューが定義されている
- 見積/受注/出荷でサーチャージ行と解除条件が自動差込される
- 請求は根拠指標と期間を別行表示している
- ネットティングで相殺し、未承認控除は支払停止ルール
- 粗利・回収・EWSが一枚のダッシュボードで見える化されている
FAQ
Q. サーチャージは値引交渉で相殺されがち。どう守る?
別行表示・根拠指標・発効ラグを契約と請求に明示し、#76の相殺統制で未承認控除を拒否。レンジ復帰時の割戻しも運用し、双方向性で受容性を上げます。
Q. 高リスク先でも売上を維持したい場合の現実解は?
小口分割+前受、エスクロー/代引、仕様代替で原価を圧縮、停止ラインは#74に沿って厳格運用。ネットティング参加や担保を条件に据置の期間限定も選択肢です。
Q. 海外取引での為替連動は?
機能通貨ベースでレンジ(例:±5%)を設定し、四半期清算。L/Cや貿易保険(#67)・ヘッジ方針(#62)と整合させ、清算は現金移動を伴わせます。
ご相談・支援メニュー
- 指数連動式(材料/運賃/為替)と契約条項テンプレ設計
- 与信×価格の連動ルールと出荷判定API(#74)実装
- サーチャージ請求の別行表示・ネットティング清算(#69)設計
- 粗利×回収×EWSの統合ダッシュボード構築(#72/#73)
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