中期経営計画を“絵に描いた餅”で終わらせない実行計画フレーム

中期経営計画を“絵に描いた餅”で終わらせない実行計画フレーム

3カ年計画や中期経営計画を作っても、「結局、棚に眠ったまま」というケースは少なくありません。 本記事では、ビジョンから数値目標・予算・KPI・アクションプランまでをつなげ、 中期計画を“現場が動く実行計画”に変えるための実務フレームを中小企業向けに解説します。

1. なぜ中期経営計画は“絵に描いた餅”になりやすいのか

中期経営計画が機能しない会社には、いくつかの共通パターンがあります。

  • 作成の目的が「金融機関や親会社向けの資料提出」になっている
  • 数値目標はあるが、達成のための具体的アクションが定義されていない
  • 現場メンバーが計画作成に関わっておらず、“自分ごと化”されていない
  • 毎月の経営会議で中期計画が参照されていない(単なる飾りになっている)

中期計画を機能させるポイントは、「ビジョン → 数値 → テーマ → プロジェクト → 日々のKPI」という 一連のつながりを設計することです。

2. ビジョンを「数値」と「テーマ」に分解する

まずは経営者の頭の中にあるビジョン・将来像を、「数値目標」と「戦略テーマ」に分解します。

(1)数値目標の軸

  • 売上高・粗利額・営業利益
  • 自己資本比率・有利子負債残高
  • 新規顧客数・リピート率・顧客単価

「3年後にどうなっていたいか」を、まずは3〜5個の数値で表現します。

(2)戦略テーマの整理

  • 既存事業の深堀り(シェア拡大・単価アップ・LTV向上)
  • 新規事業・新市場の開拓
  • 生産性向上・DX・業務標準化
  • 人材採用・育成・組織開発

中期計画では「全部やる」はNGです。3カ年で本当に注力するテーマを3つ程度に絞り込みます。

3. 売上・粗利・投資の3カ年シナリオ設計

ビジョンと言葉だけではなく、3カ年の数値シナリオを作ることで、 計画の現実性と投資余力が見えてきます。

(1)売上・粗利のシナリオ

  • 既存事業と新規事業を分けて売上・粗利を見積もる
  • 単価・数量・顧客数に分解して検証する
  • 悲観・標準・楽観の3シナリオを作成する

(2)投資・固定費のシナリオ

  • 人件費(採用・昇給・組織増)の見込み
  • 設備投資・システム投資
  • 広告宣伝費・マーケティング投資

これらを損益・キャッシュフローの両面から確認し、「攻めと守りのバランス」を調整します。

4. 中期計画を年次予算・月次KPIにブレイクダウンする

3カ年のざっくりした数値だけでは、現場は何をすればよいか分かりません。 そこで、中期計画を「年次予算」と「月次KPI」に落とし込みます。

(1)年次予算への落とし込み

  • 1年目・2年目・3年目で達成すべきマイルストーンを定義
  • 各年の売上・粗利・投資額を具体的な予算にする
  • 「ここまでやったら次のフェーズに進む」という条件を決める

(2)月次KPIの設計

  • 売上・粗利・案件数・リード数・CVRなど、事業ごとの重要指標を決める
  • 月ごとの季節変動を加味して、現実的なラインに調整
  • ダッシュボードでモニタリングする前提で項目を絞る

これにより、「今月はいま、中期計画のどこにいるのか」を定量的に追えるようになります。

5. 実行マップ(プロジェクトと担当)への落とし込み

中期計画を実行に移すには、「誰が・どのプロジェクトを・いつまでに」進めるのかを明確にする必要があります。

(1)戦略テーマ → プロジェクトへの分解

  • テーマ:既存事業のLTV向上 → プロジェクト例:サブスク化/アップセル設計/解約率改善
  • テーマ:DX・生産性向上 → プロジェクト例:基幹業務のシステム化/RPA導入/マニュアル整備

(2)プロジェクトの管理項目

  • 目的(どの中期目標に紐づくか)
  • 成果物(完了の定義)
  • 担当者(オーナー)とメンバー
  • 期限・マイルストーン

(3)経営会議との連動

経営会議では、「数字の進捗」と同時に「重要プロジェクトの進捗」を確認することで、 中期計画と日々のマネジメントを接続します。

6. AIとダッシュボードで「計画と実績のギャップ」を見える化

中期計画を運用するうえで、AIとダッシュボードは「ギャップを早く気づく」ための強力なツールになります。

  • 月次の数字を自動でダッシュボードに反映し、中期計画との乖離を表示
  • AIが差異の要因(数量・単価・構成比など)を自動分析
  • 「このペースだと3カ年目にどうなるか」をシミュレーション
  • 経営会議用の要約レポート(良かった点・リスク・次の一手)を自動生成

これにより、計画を「作って終わり」にせず、毎月のマネジメントで常にアップデートし続けることができます。

7. よくある質問(FAQ)

Q. まだ1年ごとの予算も整っていません。そこからでも中期計画を作る意味はありますか?

意味はあります。むしろ、中期の方向性が見えないと年次予算も場当たり的になりがちです。 まずはシンプルな3カ年の方向性と数値イメージを作り、 そこから逆算して1年目の予算・KPIを組み立てる進め方をおすすめしています。

Q. 計画を立てても、結局その通りにいかないので無意味に感じてしまいます。

中期計画は「当てるための予言」ではなく、「変化に素早く対応するための物差し」です。 計画と実績のズレを早期に把握し、打ち手を修正するための基準として活用することが重要です。

Q. 現場メンバーを巻き込むと時間がかかりそうで不安です。

最初から全員参加にする必要はありません。経営陣で叩き台を作成し、 キーマンやマネージャー層と一緒にブラッシュアップしていく進め方が現実的です。 重要なのは、「現場がまったく関わっていない計画」にならないようにすることです。

8. ご相談・支援メニュー

  • 3カ年中期経営計画の設計支援(ビジョン整理・数値シミュレーション)
  • 中期計画と連動した年次予算・月次KPI設計
  • 重要プロジェクトマップ(実行計画)の作成支援
  • AI・ダッシュボードを活用した中期計画モニタリング仕組み構築

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本記事は一般的な情報提供を目的としており、実際の中期経営計画・予算策定・投資判断は、 各社の業種・財務状況・リスク許容度などにより大きく異なります。 具体的な計画策定にあたっては、顧問税理士・金融機関・社内関係者と連携しながら進めることを推奨します。

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Shige