保守/SaaSの停止運用・データ保持/削除ポリシー(法務×CS×回収)
保守/SaaSの停止運用・データ保持/削除ポリシー(法務×CS×回収)
未払いへの対処は契約・運用・顧客体験の三位一体。SaaS/保守の停止基準、通知→猶予→停止→復旧の タイムライン、データ保持/削除と法的保存、CS/回収/法務の分業、例外・医療/公共等のクリティカル顧客対応まで、 #58与信・#66督促・#72証跡・#74出荷判定・#76相殺とつながる実務を設計します。
全体像:原則と設計方針
- 契約先行:#71のMSA/利用規約に停止・保持・削除・復旧を明文化(通知手段・猶予・費用)。
- 段階的制御:段階的に機能・容量・APIを絞る(いきなり全面停止は原則回避)。
- 証跡一元:判断根拠・通知・同意・復旧を案件IDで#72に保存。
- 安全第一:セキュリティ/法令違反は即時停止可。その根拠条項と範囲を規程化。
停止基準マトリクス(料金未払/契約違反/セキュリティ)
| 事由 | 基準例 | 初動 | 停止範囲 | 復旧条件 |
|---|---|---|---|---|
| 料金未払 | 期日超過7日で制限、14日で停止 | #66の督促タイムラインを発動 | API/新規作成停止、閲覧/エクスポートは許可 | 入金確認、再開手数料、次回は前受/カードに切替 |
| 重大な契約違反 | 譲渡禁止違反・不正転売・ライセンス超過 | 証拠保全→法務審査→即時一部/全面停止 | 該当機能停止、管理者ロック | 是正・追加契約・違約金の履行 |
| セキュリティ・コンプラ | 侵害兆候・マルウェア配布・法令違反おそれ | IR(インシデント)手順で即時封じ込め | 全面停止可。データは保全 | 根本原因除去・再発防止計画 |
通知→猶予→停止→復旧のタイムライン
- 期日当日:自動通知(メール/アプリ内/管理者)。支払リンク・見積/PO情報を提示。
- +2営業日:督促(停止予告)。サポートは重要障害のみ継続。
- +7営業日:一部制限(API/新規作成/増設停止)。バックアップ手段の案内。
- +14営業日:本停止。閲覧/エクスポート専用モードへ。
- +30〜60日:データ削除予告。延長は料金を明示。
- 復旧:入金確認→自動再開(SLA:数時間以内)。再開手数料/前受化を適用。
停止時の提供範囲(閲覧専用/バックアップ/サポート)
- 閲覧/エクスポート:CSV/JSON/バックアップAPIは一定期間提供。
- 容量制限:新規データ書込不可。ログインは管理者のみ。
- サポート:停止中は重要障害・法的開示を除き休止。
- サード連携:Webhook/外部APIは停止。復旧時に再同期。
データ保持・削除・法的保存(Retention/Deletion/Legal Hold)
保持(Retention)
- 停止後30〜60日を標準保持。延長は有償(容量/期間課金)。
- バックアップは暗号化・多AZ保管。保持期間は規程化。
削除(Deletion)
- 保持満了後に不可逆削除(メタ/バックアップ含む)。
- 削除証明(Certificate of Destruction)を発行可能に。
法的保存(Legal Hold)
- 係争・監査・行政対応時は削除を停止。対象・開始日・解除条件を台帳化。
例外運用(クリティカル業種・人命/公益・BCP)
- 対象:医療/公共/防災/重要インフラ等。
- 基準:未払でも機能縮退(読み取り+一部API)に留め、復旧を最優先。
- 条件:前受/保証/支払計画の合意、公的機関からの要請書面など。
- BCP:停止・復旧の並行訓練と、例外承認の期限付き運用。
運用体制:CS×回収×法務×セキュリティ
- RACI:通知(CS)/判断(回収責任者)/契約適用(法務)/封じ込め(Sec)。
- SLO:停止判定24h、復旧4h以内、データ提供依頼2営業日。
- 連携:課金ゲートウェイ失敗→#73 EWS→#74停止API→#72証跡保存。
通知テンプレ&同意文例
停止予告(+2営業日)
「◯◯様、請求書No.XXXX(期日:◯/◯)が未入金です。◯/◯ 23:59までにご入金ない場合、APIと新規作成を停止します(閲覧/エクスポートは可能)。」
本停止通知(+14営業日)
「閲覧/エクスポート専用モードへ移行しました。復旧は入金確認後に自動再開(SLA:4h)いたします。」
削除予告(+30〜60日)
「◯/◯をもってデータを不可逆削除します。延長は有償です。エクスポート手順をご参照ください。」
復旧完了
「入金を確認し、全機能を復旧しました。次回からは前受/カードに切替となります。」
監査証跡・同意ログ・規程
- ログ:通知送達・開封・同意(チェックボックス/署名)・復旧・削除のタイムスタンプ。
- 規程:停止/復旧/保持/削除/法的保存/例外承認の社内規程と改訂履歴。
- 報告:月次で停止件数・SLO達成率・苦情件数・係争件数を経営にレポート。
よくある失敗と回避策
- “いきなり遮断”:反発・炎上 → 段階的制御+退避手順+明確な復旧SLO。
- 保持/削除が曖昧:紛争リスク → 期日・延長条件・費用・法的保存を契約/規程に明記。
- CS・回収の分断:言行不一致 → テンプレとRACIで一枚化。
- クリティカル顧客の扱い:現場判断で例外乱発 → 例外は期限付+条件付で台帳管理。
チェックリスト
- MSA/利用規約に停止・保持・削除・復旧の条項が整備されている
- 通知→猶予→停止→復旧のタイムラインとテンプレがある
- 停止中の閲覧/エクスポート提供と再開手数料/前受化のルールがある
- 保持期間・削除手順・法的保存(Legal Hold)が規程化されている
- 例外運用の基準・期限・条件が台帳化されている
- 通知・同意・復旧・削除の監査ログを案件IDで保存している
FAQ
Q. 完全停止ではなく“縮退モード”を推奨する理由は?
データ退避の道を残すことで紛争・評判の悪化を抑え、復旧率と回収率が上がります。API/新規作成は止めつつ、閲覧/エクスポートを期限付きで許容します。
Q. 削除期限を過ぎても顧客が延長を要請したら?
有償延長(容量/期間課金)とLegal Holdの要否を確認。延長は最長期間を規程で定め、台帳に記録します。
Q. クリティカル顧客の例外でリスクは?
例外は期限・範囲・条件(前受/保証/計画)を明記し、台帳で監視。BCP観点で優先しつつ、恒常化は認めない運用にします。
ご相談・支援メニュー
- 停止・保持・削除・復旧条項の契約テンプレ整備(MSA/規約)
- 段階的停止と縮退モードの実装設計(API/機能フラグ/課金連動)
- 通知テンプレ/同意フロー/監査ログ/例外台帳の運用構築
- #58/#66/#72/#73/#74/#76と連動する回収KPI・SLOダッシュボード
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