債権回収BPRの総仕上げ:規程・RACI・ダッシュボード・教育パッケージ(統合編)

債権回収BPRの総仕上げ:規程・RACI・ダッシュボード・教育パッケージ(統合編)

本稿はシリーズ総仕上げ。#58与信、#66督促、#69ネットティング、#72証跡、#74出荷判定、#75保全、#76相殺統制、#77価格連動、 #78ダッシュボード、#79停止運用、#80分納を運用に定着させるため、規程/RACI/SOP/台帳/教育を一体で整備します。

統合設計図(1枚絵)

  1. 入口:#58 与信ポリシー/枠/担保 → #74 出荷可否(赤黄緑)。
  2. 平時:#73 EWS監視 → #78 ダッシュボードでDSO/CEI/超過率。
  3. 異常:#66 督促48h → #75 保全(仮差押/通知/登記)。
  4. 例外:#76 相殺統制、#80 分納(公正証書/担保)、#79 停止・保持・削除。
  5. 清算:#69 ネットティング、#77 価格/サーチャージ連動。
  6. 土台:#72 証跡一元(案件ID)、権限・監査ログ。

規程群(ポリシー/標準/手順)

  • 債権管理基本規程:目的/範囲/定義、赤黄緑判定、例外の期限付、監査年限。
  • 与信標準:スコア/限度/担保、見直し頻度、停止ライン
  • 出荷判定標準:赤=停止、黄=条件付承認の必須項目(金額/期限/条件)。
  • 督促/保全SOP:当日→+2d→+7d→+14d(#66/#75)。
  • 相殺・チャージバック規程:ネットティング限定、承認フロー、算式と上限(#76)。
  • 分納/停止運用規程:公正証書/担保必須、SaaS縮退/保持/削除(#80/#79)。
  • 証跡/データ規約:案件ID、添付分類、監査ログ、保管年限(#72)。

RACIと組織体制

タスクR(実行)A(最終責任)C(協議)I(報告)
与信査定/更新財務・信用財務責任者営業/法務経営
出荷可否判定与信オペ営業本部長倉庫/WMS経営
督促/分納交渉回収チーム財務責任者営業/法務経営
保全・法的手続法務/顧問弁護士法務責任者財務経営
相殺/ネットティング財務(売掛/買掛)財務責任者営業/物流経営
停止/復旧(SaaS/保守)CS/運用CS責任者法務/財務経営
ダッシュボード運用データ/財務CFO営業/CS全社

SOP:初動48hと赤黄緑運用

  1. 期日当日:自動通知→事実確認(予定日・理由)→黄または赤に色付け(#74)。
  2. +2営業日:書面督促・停止予告、次回出荷は支払確認後に限定(#66)。
  3. +7営業日:内容証明、分納合意(担保/公正証書)提示(#80)。
  4. +14営業日:弁護士催告→保全(仮差押・第三債務者通知・登記)(#75)。
  5. 例外:期限付/金額上限/条件必須。未達は自動失効→赤化(#74)。

台帳・カタログ(例外/保全/分納/相殺)

  • 例外台帳:目的・金額・期限・解除条件・承認者・根拠(#74)。
  • 保全台帳:対象資産・申立日・保証金・手続進捗・回収見込(#75)。
  • 分納台帳:回数・入金予定/実績・保証/担保・期限利益・SLA(#80)。
  • 相殺台帳:種別コード・算式・根拠書類・承認状況・当月限定(#76)。

ダッシュボード連動とSLO

  • KPI:DSO/CEI/期限超過率/相殺率/赤率/例外比率/黄解消TAT(#78)。
  • SLO:赤通知→90分以内着手、黄→当日内。未着手は自動エスカレーション(#73)。
  • 自動制御:赤は出荷ホールド、条件充足で自動解除(#74)。

定着化(教育・監査・改善)

  • 教育:新任オンボーディング(90分)+四半期演習(ケーススタディ)。
  • 監査:月次で台帳サンプリング(証跡→算式→契約)。逸脱は是正計画。
  • 改善:例外の恒常化をルール昇格へ、不要な承認は削減。

スターターパック(配布物リスト)

  • ① 規程ひな型:債権管理基本規程/出荷判定標準/相殺統制/分納・停止運用。
  • ② テンプレ集:督促文面/内容証明/分納合意(公正証書文言)/第三債務者通知。
  • ③ 台帳:例外・保全・分納・相殺・案件IDリンク付き。
  • ④ ダッシュボード定義書:指標式・データ辞書・ETLフロー(#72/#78)。
  • ⑤ 教育資料:90分スライド・演習ケース・チェックテスト。

よくある失敗と回避策

  • “紙の規程”止まり:運用に落ちない → RACI・SOP・台帳・KPIまでワンセットに。
  • 例外の野放し:期限なし・根拠薄 → 期限付・金額上限・承認者明記、満了で自動失効。
  • システム分断:会計/販売/WMSが連動せず → 判定APIとイベント連携で即時反映
  • 教育不足:担当交替で品質劣化 → 四半期演習+監査で定着を担保。

チェックリスト(ローンチ判定)

  • 基本規程・標準・SOPが承認済みで最新化されている
  • RACIが金額閾値と紐付いており、承認経路が明確
  • 例外/保全/分納/相殺の台帳が案件IDで運用されている
  • ダッシュボードKPIと#73アラートがSLOで運用されている
  • 新任向け教育と四半期演習が定例化されている
  • 監査ログ・証跡が7〜10年の年限で保存されている

FAQ

Q. まず何から着手すべき?

“赤黄緑”の基準と初動48hのSOPを先に決め、次にRACIと例外台帳を整備。ダッシュボードは指標定義を固めてから実装すると迷走しません。

Q. 現場の抵抗を減らすコツは?

“止めるための仕組み”だけにせず、黄での条件付承認メニュー(部分出荷/前受/担保)を整備。売上と回収の両立を示すと定着します(#74)。

Q. 海外子会社にも同じ仕組みを適用できますか?

コアは共通化し、与信指標/法的保全/相殺慣行は各国版の付属規程でローカライズ。ダッシュボードは通貨換算方針を統一しつつローカルTZで運用します(#69/#78)。

ご相談・支援メニュー

  • 統合規程パッケージ(基本規程/標準/手順/付属規程)の策定
  • RACI/承認閾値設計と例外台帳・保全台帳・分納台帳の導入
  • ダッシュボード&アラート(#73/#78/#74)とSLO運用の立上げ
  • 教育パッケージ(90分講義+ケース演習+運用監査テンプレ)

相談してみる(無料) 関連: サービス事例

本記事は一般的な情報提供です。規程や手続の適用は業種・法域・組織規模で調整が必要です。導入前に一次情報と専門家の助言をご確認ください。

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Shige