出荷可否判定の自動化(与信×枠×検収/入金×例外運用)
出荷可否判定の自動化(与信×枠×検収/入金×例外運用)
「売った後に追いかける」のでは遅い。出荷の瞬間に回収可能性を織り込むため、与信スコア・枠使用率・検収/入金・EWS(#73)を 統合し、赤/黄/緑の自動判定+期限付き例外で回す仕組みを設計・実装します(#58 与信、#66 督促、#72 証跡と連動)。
全体像:設計原則
- 自動がデフォルト:赤/黄/緑は機械判定、人は例外と交渉に集中。
- 最小限の入力:発注(PO)起票時に出荷可否の仮判定、出荷直前で最終確定。
- 期限付き例外:例外は日付・金額・条件を明示し、自動失効(#64)。
- 証跡一元化:判定根拠と承認ログを案件IDで保存(#72)。
判定信号としきい値
| カテゴリ | 信号 | 基準/しきい値例 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 与信/枠 | 枠使用率・連続上限ヒット | 使用率≧95%が3日連続で黄、≧100%は赤 | #58与信、#73R1 |
| 入金 | 期限超過残の有無/金額 | 超過>0 かつ 7日以上=赤、1〜6日=黄 | #66督促タイムライン |
| 検収 | 未検収(みなし受入未到来) | 重要品は未検収=黄、検収否認=赤 | #70検収ルール |
| EWS | 遅延確率スコア | P≥0.6=赤、0.4≤P<0.6=黄 | #73スコア |
| 契約条件 | 前受/担保条件の未充足 | 未充足=赤、部分充足=黄 | #71条項、#66分納/担保 |
| 運用 | 停止対象フラグ | 停止中=赤、停止予告期間=黄 | #70停止/再開 |
判定ロジック(赤/黄/緑)
決定ルール
- 赤(Hold):上記信号のいずれかが赤 → 出荷停止、前受/担保または入金確認で解除。
- 黄(Review):黄が1つ以上、赤なし → 財務レビュー(SLA:当日内)。条件付き承認可能。
- 緑(Release):赤/黄なし → 自動放流。WMSへ確定指示。
条件付き承認(例)
- 前受◯%受領・分納合意(期限利益喪失付)・出荷金額の縮小・代引/エスクローへ変更。
- 高額は二重承認(部長→役員)。閾値例:500万円/1,000万円。
ワークフロー(ホールド/解除/例外)
- PO起票:仮判定(緑/黄/赤)を表示。黄/赤は理由と推奨打ち手を提示。
- 出荷前日スナップ:銀行消込と検収の最新を反映し再判定。
- 赤=自動ホールド:WMSのピッキングを停止、営業へタスク発行。顧客へ支払リンク送付。
- 例外申請:テンプレ(目的・金額・期間・条件)。承認権限は金額帯で分割。
- 解除:条件充足(入金/担保/契約更新)→自動解除。満たさない場合は自動失効し赤継続。
- 記録:判断根拠・承認者・期限を案件IDで保存(#72)。
システム連携(販売・会計・WMS・決済)
- 販売管理:受注時に判定APIを呼び、受注明細に判定色・理由・期限を付与。
- 会計/収納:入金消込・クレカ/口座振替結果をイベントで即時反映(#70)。
- WMS:赤の受注はピッキング不可。解除イベントで即解禁。
- ダッシュボード:黄/赤一覧、例外台帳、期限切れ、回収キャッシュ見込(#64)。
ガバナンス・監査証跡
- 規程化:判定ルール、承認権限、SLA、ログ保存年限(7〜10年)。
- 監査ログ:誰が/いつ/何を承認・解除したか。理由と証憑リンクは必須。
- 例外台帳:満了日・条件・実績を月次レビュー、恒常化を防止。
- 顧客通知:停止/条件付出荷の通知テンプレは#66を流用(内容証明/書面督促)。
ダッシュボードとKPI
- プロセス:赤発生率、黄解消リードタイム、例外比率、期限切れ例外数。
- 財務:期限超過率、DSO、貸倒率、出荷→入金リードタイム。
- 実効性:赤→回収に至る割合、例外出荷の不履行率、与信枠回転。
よくある失敗と回避策
- 人質化:停止を乱発→関係悪化 → 黄での条件付き承認メニューを整備。
- 例外の恒常化:期限なし例外 → すべて期限付かつ自動失効。
- 根拠不明:判定理由がブラックボックス → ルールとEWS要因をUIに表示(#73)。
- システム分断:会計/収納が遅延 → 入金イベントを即時で取り込む設計に。
チェックリスト
- 赤/黄/緑の機械判定と例外ルールが規程化されている
- 枠・入金・検収・EWS・契約条件が自動連携している
- 例外は期限・金額・条件が必須で、自動失効する
- WMSとピッキング停止/解除がAPI連携されている
- 判断根拠・承認ログが案件IDで可監査になっている
- KPI(赤率・黄解消TAT・DSO・貸倒率)がダッシュボード化されている
FAQ
Q. 停止で売上を逃しませんか?
黄での「部分出荷」「前受◯%」「代引/エスクロー」「担保設定」などの条件付き承認を標準メニュー化すれば、売上と回収の両立が可能です。
Q. 例外が多く、結局人手が増えます。
例外の閾値・権限・期限を見直し、典型パターンはテンプレ化(自動差込)。月次で例外台帳をレビューし、恒常化した条件はルールへ昇格させます。
Q. ECなど即時出荷はどう制御?
B2C/ECは事前決済を原則に。B2B即時出荷はプリペイド/与信スコア高のみ許可し、失敗決済は自動キャンセルで在庫引当を解除します。
ご相談・支援メニュー
- 判定ルール/しきい値の設計(赤黄緑)とEWS連携
- 例外承認フローとテンプレ(条件付出荷・前受・担保・分納合意)整備
- 販売/会計/収納/WMS/APIの統合とダッシュボード実装
- #58/#66/#72/#73と連動する出荷可否ガバナンスの運用伴走
相談してみる(無料) 関連: サービス| 事例
投稿者プロフィール
最新の投稿
資金調達編2025年11月22日資金繰りを“読める経営者”になるための実務フレーム
資金調達編2025年11月21日銀行・金融機関が「また貸したくなる」会社になるモニタリング資料パックの作り方
実務ノウハウ編2025年11月20日中小企業が今すぐ取り入れるべき「経営ダッシュボード」構築法
実務ノウハウ編2025年11月19日生成AIを活用した経営改善:バックオフィス効率化から資金繰り分析まで
