分納合意の運用高度化(信用保証・担保・公正証書・モニタリング)

分納合意の運用高度化(信用保証・担保・公正証書・モニタリング)

分納は回収のための装置。#66の督促、#74の出荷判定、#75の法的保全、#76の相殺統制と接続し、 スケジュール×担保/保証×執行力×モニタリングで履行率を最大化します。合意書テンプレ、台帳、SLA、エスカレーションを標準化。

全体像:設計原則

  1. 即日合意:遅延検知から48時間以内に分納可否を決定(#66)。
  2. 担保一体:分納は保証/担保とセット。無担保の長期分納は避ける。
  3. 期限利益喪失:1回でも不履行なら全額一括請求+停止/保全を自動発動(#74/#75)。
  4. 証跡と可監査:案件IDで契約/請求/入金/例外/通知を一元保存(#72)。
  5. 更新制:最長3か月(最大6か月)の短期更新を原則に、四半期ごと再査定。

分納スケジュール設計

方式内容適用条件注意点
階段型(Front-Loaded)第1回を大きく(例:総額の30〜50%)資産はあるが流動性不足初回入金未了なら即停止・保全へ
等額分割月次/隔週で均等払いサブスク/定常売買決済は自動引落/カードを必須(#70)
一括+尾尾(Balloon)小分割+最終大口売却・資産処分予定がある最終弁済に保証/担保を厚めに
相殺併用販促費/リベート等とネットティング代理店/小売チャネル(#76)承認済み相殺のみ。当月限定

信用保証・担保の組み合わせ

人的担保

  • 代表者連帯保証(極度額設定)。
  • 第三者保証(親会社/主要株主)。

物的担保

  • 売掛/在庫の譲渡担保動産・債権譲渡登記(#75)。
  • 所有権留保(納入済み動産)。
  • 預金・仮払金の質権設定

信用補完

  • 信用保証会社の債務保証。
  • スタンバイLC(SBLC)/保険付きファクタリング。

公正証書(執行認諾)で執行力を付与

  1. 目的:裁判を経ずに強制執行可能な債務名義を得る。
  2. 手順:分納合意書の条項を整備→当事者/保証人の本人確認→公証役場で作成(執行認諾文言)。
  3. 記載要点:支払金額・期日・遅延損害金・期限利益喪失・担保/保証・差押同意・費用負担。
  4. 留意:代理権と印鑑/署名の適正、確定日付、社内権限決裁。

運用:台帳・SLA・出荷制御・例外

  • 台帳:案件ID、合意日、総額、回数、入金予定、決済方法、担保/保証、執行手段、例外期限。
  • 入金SLA:入金確認→当日中に台帳自動更新。未入金は翌営業日10:00までに連絡。
  • 出荷制御:分納中は#74の判定を黄固定。未入金発生で自動(停止)。
  • 例外:1回のみの延長3営業日を上限に。以降は期限利益喪失・停止・保全。

EWSモニタリング&自動エスカレーション

  1. 指標:分納履行率、端数入金、与信枠使用率、失敗決済回数、ニュース/官報(#73)。
  2. トリガー:失敗決済2回/30日、端数化2回、枠連続95%で黄→赤
  3. エスカレーション:未入金当日=担当→+24h=上長→+48h=役員/法務。保全(仮差押・第三債務者通知)を起動(#75)。

テンプレ(合意書・同意条項・通知)

分納合意(要旨)

  • 第◯条(目的)債務総額¥◯◯の弁済計画を定める。
  • 第◯条(支払)支払期日・金額・方法(自動引落/カード/振込)。
  • 第◯条(担保/保証)連帯保証人◯◯、譲渡担保、動産/債権譲渡登記。
  • 第◯条(期限利益喪失)1回の不履行で全額当然弁済期到来。
  • 第◯条(遅延損害金)年◯%。
  • 第◯条(執行)本書を公正証書とする(執行認諾)。

停止・解除通知(例)

「第◯回分の未入金により、分納合意第◯条に基づき期限の利益は喪失しました。全額の即時弁済を求めるとともに、出荷停止および保全手続を開始します。」

例外承認(延長)

「◯/◯期日の支払は3営業日の猶予を認めます(一回限り)。以後の不履行は自動的に期限利益を喪失します。」

よくある失敗と回避策

  • 無担保の長期化:合意だけで出荷継続 → 担保/保証+公正証書をセットに。
  • 約束書の粗さ:差押えに耐えない → 条項をテンプレ化し確定日付・本人確認・権限確認。
  • 例外の常態化:毎回“数日の猶予” → 例外は1回限り・期限付、台帳に残す。
  • 監視不足:入金確認が遅れる → 自動引落+EWS連動で当日検知

チェックリスト

  • 分納は48時間以内に可否判断し、合意書テンプレで即締結
  • 担保/保証(連帯保証・譲渡担保・登記・SBLC等)を必ず付す
  • 合意は公正証書または債務名義化できる手段で作成
  • 台帳で入金予定・履行率・例外・期限利益喪失を管理
  • #73 EWSと#74出荷制御が自動連動している
  • 不履行時は#75保全(仮差押・第三債務者通知)に即移行

FAQ

Q. 公正証書は毎回必要ですか?

高額・高リスクは原則必須です。少額・短期は支払督促や和解調書でも代替可能ですが、執行力の確保が最優先です。

Q. 代表者保証を嫌がられます。

代替として譲渡担保+登記SBLC/保証会社前受比率の引上げを提示。保証がゼロなら分納期間は3か月以内に限定します。

Q. 分納期間中の新規出荷は?

前受/代引/escrowを原則に。#74の判定は黄固定で、未入金やEWS悪化で自動赤→停止。例外は期限・金額・条件を必須にします。

ご相談・支援メニュー

  • 分納合意テンプレ(公正証書文言・保証/担保条項・期限利益喪失)整備
  • 動産/債権譲渡登記・第三債務者通知の実務設計(#75)
  • EWS連動の自動エスカレーションと出荷制御(#73/#74)
  • 分納台帳・ダッシュボード(履行率/例外/保全移行TAT)実装

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本記事は一般的な情報提供です。保証・担保・公正証書・執行の可否や要件は法域・事案により異なります。導入前に最新の一次情報と専門家の助言をご確認ください。

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Shige