実務で使える「条項テンプレ集」

実務で使える「条項テンプレ集」

#58与信、#66督促、#71契約、#75保全、#76相殺統制、#80分納の要をなすのが条項の精度です。 本稿では、遅延損害金/期限の利益喪失/所有権留保/相殺禁止/集合譲渡登記文言/公正証書(執行認諾)の 実務テンプレを、差替え変数付きで提供します(社名・金額・期日・手続は適宜置換)。

遅延損害金条項

【遅延損害金】
第◯条 甲(買主)が本契約に基づく金銭債務の支払期日に履行しないときは、甲は、期日の翌日から完済に至るまで、未払金額に対し年◯%(日割計算、365日基準)の割合で算定した遅延損害金を乙(売主)に支払う。
    

期限の利益喪失条項

【期限の利益の喪失】
第◯条 甲に次の各号の一が発生したときは、甲は当然に期限の利益を喪失し、乙に対し直ちに全ての債務を弁済しなければならない。
(1)支払期日を経過しても支払をしないとき
(2)手形・小切手の不渡り、又は支払停止の状態に至ったとき
(3)仮差押、差押、競売、強制執行、又は租税滞納処分を受けたとき
(4)破産、民事再生、会社更生、特別清算の申立てがあったとき、又は自ら申立てたとき
(5)本契約に重大な違反があり、乙の催告後相当期間内に是正されないとき
    

所有権留保(動産売買)

【所有権留保】
第◯条 本契約に基づき乙が甲に引き渡す商品の所有権は、当該商品の代金その他本契約に基づく甲の全債務が完済されるまで、乙に留保される。甲は、乙の書面による承諾なく、当該商品の譲渡、担保設定、移動、混和、加工をしてはならない。
(2)甲が期限の利益を喪失した場合、乙は直ちに商品の返還を求めることができる。
    

相殺禁止・控除禁止

【相殺・控除の禁止】
第◯条 甲は、乙の事前の書面承諾なく、本契約に基づく代金その他の金銭債務から、いかなる理由によるものであれ相殺又は控除を行ってはならない。甲が販促費、リベート、ペナルティ等の控除を主張する場合は、乙の事前書面承認および根拠資料の提出を条件とし、清算は両当事者の合意する月次ネットティングにより行う。
    

集合動産譲渡担保(在庫)

【集合動産譲渡担保】
第◯条 甲は、乙に対する一切の債務の担保として、甲が現在及び将来保有する別紙「在庫リスト」に記載の在庫(更新含む)一切について、乙に譲渡担保権を設定し、乙の承諾のもと動産譲渡登記を行う。甲は在庫の所在・数量・識別情報を乙の求めに応じ報告し、乙は必要な範囲で検査できる。
    

集合債権譲渡担保(売掛)

【集合債権譲渡担保】
第◯条 甲は、乙に対する一切の債務の担保として、甲が現に有し又は将来取得する取引先(別紙「第三債務者一覧」記載)の売掛金債権一切を乙に譲渡する。甲は乙の指示により当該第三債務者に対し対抗要件具備のための到達を伴う通知又は承諾取得を行うものとし、その費用は甲の負担とする。
    

公正証書(執行認諾)用文言

【執行認諾に関する特約】
第◯条 甲は、本契約に基づく金銭債務につき、支払を怠ったときは直ちに強制執行に服する旨陳述したうえで、本契約を公証人の面前で公正証書とし、その正本により強制執行できることに同意する。
    

運用の要点(証跡・登記・通知)

  • 証跡:契約/注文/納品/検収/請求/入金/交渉ログを案件IDで一元保存(#72)。
  • 登記:動産・債権譲渡登記は平時に先行、優先順位を確保(#75)。
  • 通知:第三債務者通知・内容証明・差押は48時間ルール(#66/#75)。
  • 統制:相殺は事前承認+当月ネットティングのみ(#76)。

チェックリスト

  • 遅延損害金の利率・計算基準が明記されている
  • 期限の利益喪失の事由が網羅されている
  • 所有権留保と返還・禁止行為が規定されている
  • 相殺禁止とネットティング運用が規定されている
  • 集合動産/集合債権の担保条項と登記が準備されている
  • 公正証書(執行認諾)文言と手続フローが整備されている

FAQ

Q. これらの条項は全顧客に同じで良い?

原則は統一、ただし与信ランクや商流により閾値(利率・通知期限・ネットティング条件等)を可変に。別紙で可変パラメータ化すると運用しやすいです(#58/#74)。

Q. 相殺禁止は強く出すと取引に支障?代替は?

“原則禁止+事前承認+根拠資料+当月ネットティング”に整理し、正当な控除は月次で清算。#76の承認フローとセットなら現場の反発を抑えられます。

Q. 公正証書はいつ必須?

高額・高リスク・分納(#80)は原則必須。少額は支払督促や裁判上の和解で代替可ですが、執行力確保を優先してください。

ご相談・支援メニュー

  • 条項テンプレの貴社向けカスタマイズ(与信ランク別の可変設計)
  • 集合譲渡登記・第三債務者通知・相殺統制の運用設計(#75/#76)
  • 分納合意(公正証書)・担保設計の実務支援(#80)
  • 証跡一元化・ダッシュボード連動(#72/#78)

相談してみる(無料) 関連: サービス事例

本記事は一般的な雛形の提供です。適用の可否や要件は業種・法域・取引実態により異なります。実装前に一次情報と専門家の助言をご確認ください。

投稿者プロフィール

Shige