補助金申請で差がつく『費用対効果』の書き方
補助金申請で差がつく「費用対効果」の書き方
同じ投資でも、効果の見える化次第で採択率は大きく変わります。KPI設計、算定式、根拠資料、相見積・工程表との整合まで、審査側が読みやすい費用対効果の書き方を解説します。
審査が見るロジック(因果の通し方)
費用対効果は課題 → 打ち手 → 効果 → 収益/公共性の因果で書きます。
- 課題:現状KPI(稼働率、歩留り、欠品率、回収日数など)と損失額を提示。
- 打ち手:設備/システム/プロセス改善を仕様・能力で具体化。
- 効果:改善幅(%/時間/距離/CO2)を数値で示す。
- 収益/公共性:粗利増、コスト減、雇用・地域・環境への波及。
KPIの設計(事業・財務・環境/物流)
事業KPI
- 生産能力・稼働率・歩留り・タクトタイム
- 欠品率・納期遵守・受注残・在庫回転日数
- CV数/客単価・返品率・解約率
財務KPI
- 粗利率・限界利益率・原価率
- 回収日数(DSO)・支払日数(DPO)・運転資本
- 現預金月数・DSCR・ROI/回収年数
環境/物流KPI
- 輸送距離/回数・積載率・庫内動線距離
- 電力/燃料消費・CO2排出量
- 事故/破損率・廃棄量
代表的な算定式と書き方例
1) 投資回収・ROI
- 回収年数=投資額 ÷ 年間キャッシュ効果(粗利増+コスト減−増加費)
- ROI=年間キャッシュ効果 ÷ 投資額
- 記載例:「本投資2,000万円、年間効果740万円 → 回収2.7年、ROI=37%」
2) 生産性・品質
- 生産性向上率=(導入後タクト−導入前タクト)÷導入前タクト×-1
- 不良率改善=導入前後の不良率差×年間生産量×単価
3) 在庫・物流
- 在庫圧縮額=在庫日数改善×日商原価
- 輸送コスト減=(距離/回数/積載率の改善)×単価
4) 環境(CO2/省エネ)
- CO2削減量=省電力(kWh)×排出係数+燃料削減量×係数
- 金額換算=エネルギー単価×削減量+カーボンプライス等の参考換算
根拠資料・前提条件の示し方
- ベンチマーク:社内実績・メーカー仕様・実測値を出典付きで。
- トレース可能性:試算表・原価表・ログ・写真・図面で裏付け。
- 前提の透明性:稼働時間、歩留り、単価、為替等を明記し、恣意性を排除。
- 効果の重複排除:複数施策の効果はダブルカウントしないルールを記載。
相見積・工程表・体制との整合
- 相見積:同等仕様(型式/能力/台数/工期/条件)で3者。費目別(本体/工事/諸経費)に分解。
- 工程表:効果が発現する時期と、検収・稼働開始の月を工程表に紐付け。
- 体制:誰が検収し、誰がKPIを測定し、月次で誰に報告するかを明記。
図表テンプレ(1枚サマリー)
- ① 現状KPI:タクト/歩留り/欠品/在庫日数/DSO 等(グラフ)。
- ② 打ち手:導入機器/システム仕様、運用変更。
- ③ 効果試算:粗利増・コスト減・在庫圧縮・CO2削減、回収年数/ROI。
- ④ 根拠:出典・前提・実測値・相見積の抜粋。
- ⑤ リスクと対応:実装遅延/学習曲線/切替停止時間への備え。
不採択の典型NGと回避策
- 抽象表現:「効率化」「見える化」だけ → KPIと金額換算に落とす。
- 根拠不明:メーカー資料の丸写し → 自社条件(稼働・品種・工程)で再計算。
- 重複計上:歩留り改善と不良減のダブルカウント → 因果の分離と控えめ前提。
- 時期ずれ:効果発現が翌期なのに当期に全額計上 → 工程表と一致させる。
- 公共性の弱さ:自社利益のみ → 雇用/地域/環境/波及の外部性も記載。
チェックリスト
- 課題→打ち手→効果→収益/公共性の因果が一貫している
- 主要KPI(事業/財務/環境)が数値で定義されている
- 回収年数・ROI・在庫/物流・CO2などの算定式と前提が明記されている
- 相見積・工程表・体制と発現時期・金額が一致している
- 根拠資料(出典・実測・写真・図面・ログ)が添付されている
- ダブルカウントを避け、感応度(±10%)で妥当性を示している
FAQ
Q. 定量化が難しい効果はどう書く?
まずKPIに分解(例:リードタイム→在庫日数、顧客満足→解約率/再購入率)。それでも困難な場合は、代理指標(苦情件数、手戻り率)と事例・写真で補強します。
Q. 効果の前提が強気になりがちです。
控えめ前提+感応度(-10%/-20%)でレンジを示し、下振れ時の代替策を併記すると評価が安定します。
Q. 小規模案件でも費用対効果は必要?
必須です。小さくてもKPIと回収年数を明示すると、通常更新ではないことを説明できます。
ご相談・支援メニュー
- 費用対効果サマリー1枚テンプレ(KPI・算定式・根拠欄)提供
- KPI設計と効果試算(回収/ROI/在庫/物流/CO2)
- 相見積整合・工程表・体制の設計と申請書反映
- 感応度分析・不採択フィードバックの改善伴走
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