買いたたきを避ける「価格交渉と原価根拠」実務
買いたたきを避ける「価格交渉と原価根拠」実務
適正価格は説明可能性から生まれます。BOM・工数・間接費の積上げ、指数連動(原材料/人件費/エネルギー)、 為替/物流のトリガー条項、証跡と合意プロセスの標準化で、不当な値下げ圧力に一貫した対応を。
全体像:適正価格の設計図
- 見える化:原価積上げの標準様式(BOM・工数表・間接費配賦)を統一。
- ルール化:指数連動・為替/物流・最低粗利%など改定トリガーを基本契約へ。
- 交渉再現性:台本・根拠資料・承認ワークフローをテンプレ化。
- 証跡:要求/協議/合意/施行日のログを電子保管(監査・将来交渉の資産)。
コスト積上げ:BOM/工数/間接費
BOM(材料・部材)
- 主要材の単価、歩留、スクラップ率、ロット条件、為替感応度を明示。
- サプライヤ見積は有効期限と前提条件(MOQ/リードタイム)を添付。
工数(製造/開発/役務)
- 作業ブレークダウン(WBS)×標準時間×レート(スキル帯別)。
- 段取り替え/試作/再検査等の非定常は別費目で管理。
間接費と利益
- 配賦キー(工数/設備時間/面積等)を明記し、最低粗利%の下限を社内基準化。
- 値引きは例外承認制、値戻しの条件を同時に記載。
価格改定トリガーと指数連動
- 指数連動:原材料指数/賃金指数/電力・燃料指数の変動率±X%で自動改定。
- 為替条項:TTMがレンジ上限/下限を超えた場合、Δ/単価を自動調整。
- 物流費:燃油サーチャージやコンテナ運賃のベースラインから±Y%で見直し。
- 設計変更:仕様・品質・数量・納期変更は変更見積を前提に協議。
交渉プレイブック(台本・資料・ロジック)
| 場面 | 提出物 | キー台詞(例) |
|---|---|---|
| 改定要請 | 価格根拠シート、指数推移、為替/物流グラフ、影響試算 | 「公表指数で+9.8%。契約の指数連動条項に基づき、来月1日から単価を改定したく存じます。」 |
| 反論対応 | BOM詳細、工数WBS、代替案(仕様/LOT/リードタイム) | 「仕様A→A'への切替で+6.2%圧縮可。代わりにLOT×2の平準化をご提案します。」 |
| 最終合意 | 改定合意書(発効日・遡及/据置・適用範囲) | 「四半期毎の見直しと下落時の値戻しも明記し、双方向で公平に運用します。」 |
オペレーション:見積〜改定〜合意の運用
見積フェーズ
- 見積様式・算式・前提(指数・為替・物流・MOQ)をテンプレで統一。
- 合意なき追加作業は変更指示書発行を原則化。
改定フェーズ
- トリガー閾値を超過次第、自動通知→協議日程→合意書ドラフトまで一気通貫。
- 価格は発効日と遡及有無を明確化(請求締めと連携)。
合意・実装
- ERP/会計/購買マスタの同日更新、未収/未払調整、在庫評価差の処理をタスク化。
- ダッシュボードは改定率・適用率・未反映件数を自動表示。
ダッシュボードとKPI
- 適正化KPI:改定要請率、合意率、平均改定率、反映リードタイム。
- コストKPI:材料比・労務比・間接比の構成、指数乖離。
- 品質/供給:値下げ後の品質不良率・納期遵守率の変動(無理な値下げの副作用検知)。
よくある失敗と回避策
- 根拠の非開示:「企業秘密」を盾に全て黒塗り→範囲と粒度を合意のうえ、必要部分のみ開示。
- 一本勝負:指数連動や為替条項が無く都度交渉→契約に条文化し、手間と対立を削減。
- 値引き常態化:一時対応が恒久化→値戻し条件と有効期限を明示。
- 証跡不足:口頭合意→後で紛糾→議事要旨/合意書の即日発行を徹底。
チェックリスト
- BOM・工数・間接費の標準様式を運用している
- 指数連動・為替/物流・最低粗利%の契約条項がある
- 改定トリガー超過時の自動通知〜合意書まで一気通貫のフローがある
- 値引きは例外承認と値戻し条件をセットで記録している
- 交渉台本・根拠資料・議事要旨のテンプレがある
- 改定のマスタ反映と在庫評価差処理が標準化されている
FAQ
Q. コスト開示はどこまで出すべき?
BOMの主要材、工数の計算式、配賦キーなど検証可能な範囲に限定し、秘匿領域はレンジ表示や監査下での開示にします。
Q. 一律値下げ要求が来た場合の初動は?
根拠資料の提示を求め、契約条項(指数連動/為替/物流/最低粗利)に基づく再協議へ。代替案(仕様/LOT/納期)も併せて提示します。
Q. 値引きした場合の再値上げ(値戻し)は可能?
値引き時点で期限と条件(指数・為替・物流のしきい値、品質/供給の悪化など)を合意していれば、値戻しは実務上可能です。
ご相談・支援メニュー
- 価格根拠シートの設計(BOM/工数/間接費/利益)とテンプレ提供
- 指数連動・為替/物流・最低粗利%の契約条項ドラフト作成
- 交渉プレイブック(台本/反論対応/議事要旨)と教育
- 改定フローのワークフロー化とダッシュボード構築
相談してみる(無料) 関連: サービス| 事例
投稿者プロフィール
最新の投稿
資金調達編2025年11月22日資金繰りを“読める経営者”になるための実務フレーム
資金調達編2025年11月21日銀行・金融機関が「また貸したくなる」会社になるモニタリング資料パックの作り方
実務ノウハウ編2025年11月20日中小企業が今すぐ取り入れるべき「経営ダッシュボード」構築法
実務ノウハウ編2025年11月19日生成AIを活用した経営改善:バックオフィス効率化から資金繰り分析まで
