銀行・金融機関が「また貸したくなる」会社になるモニタリング資料パックの作り方

銀行が「また貸したくなる」会社になるモニタリング資料の作り方

金融機関との関係づくりは、単発の決算書提出だけでは不十分です。月次試算表・資金繰り・KPIレポートをセットにした“モニタリング資料パック”を整えることで、「数字で説明できる会社」という評価を獲得し、追加融資・条件変更交渉を有利に進められます。その設計と運用のポイントを解説します。

1. 金融機関が見ている「3つのポイント」

銀行や信用金庫は、決算書だけで融資判断をしているわけではありません。実際には、次のような「継続的な情報」と「コミュニケーションの質」を重視しています。

  • ① 数字の継続性: 毎月の試算表・資金繰りが出ているか
  • ② 説明力: 変動が起きた理由を論理的に説明できるか
  • ③ 予見性: 今後の計画・シナリオを示せるか

これらを支えるのがモニタリング資料パックです。決算書と一緒に、あるいは四半期ごとの面談時に提示できれば、金融機関からの信頼度は大きく向上します。

2. モニタリング資料パックの基本構成

中小企業向けの「ひとまずここまで揃えれば十分」という構成例は次のとおりです。

  • ① 月次試算表(損益計算書・貸借対照表)
  • ② 6〜12ヶ月先までの資金繰り表
  • ③ 売上・粗利・固定費など主要KPIのグラフ
  • ④ 直近のトピック・リスク・打ち手をまとめた1枚レポート
  • ⑤ 補足資料(主要取引先の動向、設備投資計画など)

大事なのは「完璧さ」ではなく継続性とわかりやすさです。最初から高度な管理を目指すより、シンプルでも毎月出せるフォーマットを作る方が金融機関の評価は上がります。

3. 試算表・資金繰り表の見せ方のコツ

同じ数字でも、見せ方によって伝わり方は大きく変わります。特に意識したいポイントは次の3つです。

(1)「トレンド」で見せる

単月の数字だけでなく、過去12ヶ月分の推移をグラフ化することで「改善しているのか」「悪化しているのか」が一目で伝わります。

(2)キャッシュの見通しをセットで示す

資金繰り表は、「売上予測」「入金サイト」「返済・税金・賞与」を織り込んだうえで、最低現預金残高がどこまで落ちるかを示すことが重要です。

(3)一言コメントを添える

「なぜこうなったのか」「今後どうするのか」を簡潔にコメントするだけで、資料の説得力は一気に高まります。

4. KPIレポートとグラフ化のポイント

試算表や資金繰り表だけでは、事業の実態が見えにくいことがあります。そこで役立つのが、3〜5個に絞り込んだ経営KPIレポートです。

  • 売上高・粗利額・粗利率
  • 固定費(人件費+その他)の推移
  • 営業利益または営業キャッシュフロー
  • 主要商品の販売数量・単価・リピート率

それぞれを折れ線グラフや棒グラフにして、金融機関にも自社メンバーにも「一画面で全体が分かる」設計にするのがポイントです。

5. AIを活用した月次レポート自動生成

最近は、試算表・スプレッドシート・ダッシュボードのデータをAIに読み込ませ、月次コメントを自動生成するケースが増えています。

  • 売上や粗利の増減要因の自動要約
  • 前年同月比・予算比での差異分析コメント
  • 在庫や売掛金などのリスクアラート
  • 今後3〜6ヶ月のシミュレーションコメント

経営者がゼロから文章を書く負担を減らしつつ、金融機関に対して「自社でも数字を分析している」という姿勢を示すことができます。

6. 実際の運用事例と改善効果

事例①:建設業D社
月次試算表と資金繰り表に加え、粗利率と受注残高のグラフをモニタリング資料として提示。銀行から「数字の説明が以前よりクリアになった」と評価され、追加融資の審査がスムーズに進行。

事例②:卸売業E社
過去の決算書提出だけだったところから、AI生成の月次レポートを添付する運用へ変更。金融機関側から「モニタリング契約」を提案され、条件変更交渉が有利に。

事例③:サービス業F社
毎月のモニタリング資料を社内共有にも活用し、経営会議と銀行面談で同じ資料を使う運用に一本化。数字の理解度が社内で揃い、改善スピードが大幅に上がった。

7. よくある質問(FAQ)

Q. まだ月次試算表がきちんと出せていません。そこから相談できますか?

はい、可能です。まずは「四半期ごとの簡易試算表」から始め、その後月次化していくステップで設計します。会計事務所との役割分担も含めて整理するところからサポートします。

Q. 銀行から具体的なモニタリング資料の指定はありませんが、作る意味はありますか?

あります。先にこちらから分かりやすい形で数字を提示することで、「この会社は自分たちで経営をコントロールしている」という印象を与えられます。結果として、融資相談や条件交渉がスムーズになります。

Q. AIレポートの導入には専門的なシステム開発が必要ですか?

必ずしも必要ではありません。既存のスプレッドシートやCSVをもとに、ChatGPTなどのAIに読み込ませるだけでも十分なレベルのコメント生成が可能です。最初は人のチェックを前提に小さく始めることを推奨しています。

8. ご相談・支援メニュー

  • 銀行・信用金庫向けモニタリング資料パックの設計・テンプレート作成
  • 月次試算表・資金繰り表・KPIレポートのフォーマット整備
  • AIを活用した月次経営レポート自動生成の仕組みづくり
  • 金融機関との面談資料のブラッシュアップ・ロールプレイ支援

モニタリング資料パックについて相談する(無料)

本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な金融機関との取引条件や融資可否は、各機関の審査方針や最新の金融情勢によって異なります。実務対応の際は、顧問税理士・金融機関担当者とも連携しながら進めてください。

投稿者プロフィール

Shige