経営者保証の解除に向けた具体的なステップ

経営者保証の解除に向けた具体的なステップ

個人保証を外したい——。本稿では、ガイドラインの考え方を踏まえ、解除(見直し)実現に向けた要件整理・実務手順・提出書類・交渉の勘所を、チェックリストとFAQ付きでまとめます。

まず押さえるべき基本(ガイドラインの要点)

経営者保証は、担保・返済条件・財務の健全性・法人と個人の分離などを総合的に見て、見直し(軽減・解除)が検討されます。直近では、法人と個人の分離管理や内部統制の整備が重視される傾向です。

解除検討の主な要件(ベースライン)

  • 法人と個人の明確な分離:役員貸付の解消、家計と会社の資金の混同排除、適切な役員報酬水準。
  • 返済可能性の裏付け:安定したキャッシュフロー、返済原資の見通し、過度な短期借入依存の解消。
  • 財務の健全性:自己資本の積上げ(欠損の縮小)、在庫・売掛の適正化、債務超過からの改善プロセス。
  • 適切な担保・保証の代替:動産/売掛担保、保証協会、ABL等の活用。
  • 情報開示・モニタリング体制:月次試算表、資金繰り表、KPIの定期報告。

実務の3ステップ(準備→申出→見直し)

  1. 準備:法人・個人分離の徹底、役員貸付精算、資金繰り安定化、月次決算の運用、KPI管理。
  2. 申出:メイン行に対して解除(または軽減)を正式に申入れ。根拠資料代替スキーム案を同時提示。
  3. 見直し:段階的軽減(上限設定、比率低減、連帯→限定)や、特定融資からの解除などの選択肢で合意形成。

複数行取引の際は、メイン行の合意形成が他行へのレファレンスになります。

準備すべき資料と整え方

  • 事業計画書:3か年の損益・資金繰り・設備投資計画、前提条件。
  • 月次試算表&資金繰り表:少なくとも直近12〜24か月。季節変動と改善施策の効果を反映。
  • 役員貸付・関連当事者取引の整理表:解消計画と進捗。
  • 担保・保証の代替案:ABL、保証協会付、動産/売掛担保の設定可否。
  • 内部統制・運用ルール:社内経理手順、支払承認フロー、在庫・与信管理。

金融機関との交渉ポイント

  • 返済原資の説明:営業CF・改善KPI・粗利率の持続性を数字で示す。
  • 代替スキームの提示:ABLや保証付の併用、担保構成の変更でリスク低減を提案。
  • 段階案の用意:比率軽減、上限設定、特定融資のみ解除など複線で交渉。
  • 情報開示の継続:月次報告・四半期レビュー・予実管理をコミット。

よくある落とし穴

  • 役員貸付の放置:分離性が弱まり、解除が遠のきます。計画的な解消を。
  • 短期資金依存:手形・つなぎ借入の多用は安定性を損なう。長期化・均しを検討。
  • 単発黒字での申出:再現性・持続性が不十分だと判断されやすい。
  • 資料の更新遅延:審査期間中に数字が古くなると再提出が必要に。

チェックリスト

  • 役員貸付金を解消または縮減できている
  • 月次決算・資金繰り・KPIの運用が定着している
  • 返済原資(営業CF)の再現性が説明できる
  • 担保・保証の代替スキーム(ABL等)を提示できる
  • 段階的軽減→解除のプランを用意している

FAQ

Q. 債務超過でも解除は可能ですか?

原則は厳しいですが、改善計画の実行と代替担保・保証の組み合わせで、段階的軽減の余地がある場合があります。

Q. どの銀行に言えばよいですか?

まずはメイン行です。メイン行で合意形成できると、他行の判断にも良い影響を与えます。

Q. 一度断られたら諦めるべき?

否。要件不足箇所を特定し、改善施策(資本増強・分離の徹底・ABL導入等)を進め、段階的軽減から再提案します。

ご相談・支援メニュー

  • 法人・個人分離プランの設計と役員貸付解消の実務
  • 月次決算/資金繰り運用の定着化(KPI設計・モニタリング)
  • 解除に向けた交渉計画(段階案・代替担保/保証・資料整備)

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本記事は一般的な情報提供であり、金融機関の判断や各社の方針によって運用が異なる場合があります。最新のガイドラインと取引金融機関の方針をご確認ください。

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Shige