業種別に見る『省エネ投資』補助金の活用法
業種別に見る「省エネ投資」補助金の活用法
電気・ガス・燃料費の高止まりに対して、補助金を活用して「更新コストを圧縮しつつ、ランニングを下げる」ための実務ガイド。業種別の着眼点と、効果算定・申請フローをまとめました。
省エネ投資×補助金の基本
- 目的:エネルギー使用量の削減と需要平準化、老朽設備の更新によるCO2削減。
- 代表的な投資:高効率空調・ボイラ・コンプレッサ・インバータ・高効率照明・断熱・EMS・BEMS・太陽光+蓄電の自家消費など。
- 評価軸:一次エネルギー消費削減量(%/GJ)、費用対効果(円/GJ、回収年数)、ピークカット寄与。
- 制度の共通ルール:事前申請・採択後着手、相見積の原則、価格妥当性、仕様の同等性、証憑管理。
業種別の着眼点
1) 製造業
- 要点:動力・熱源の高効率化(コンプレッサ、ボイラ、蒸気トラップ、熱交換器、インバータ化)。ライン停止時の待機電力削減。
- 対象例:油冷式→インバータスクリュー、老朽ボイラ→高効率貫流、廃熱回収、VFDポンプ・ファン、EMS。
- 計測:生産量あたりのエネルギー原単位(kWh/個、Nm³/時)を基準化。
2) 飲食・宿泊
- 要点:空調・給湯・冷凍冷蔵の効率化と、営業時間帯のデマンド管理。
- 対象例:高効率エアコン、CO2冷媒ショーケース、業務用冷蔵庫、エコキュート、高断熱ガラス、LED。
- 計測:客室/座席あたり、延床面積あたりの消費量で比較。
3) 小売・商業施設
- 要点:照明・空調・ショーケース、BEMSによるスケジュール運転とピークカット。
- 対象例:LED(調光・センサー)、高効率パッケージ、ケース扉化、空調ゾーニング。
- 計測:営業時間帯別の負荷曲線、ピーク需要の低減率。
4) 運輸・倉庫
- 要点:動力車両・フォークリフトの電動化、庫内冷却・空調の断熱強化。
- 対象例:電動フォークリフト、LED高天井灯、ドックシェルター、気流遮断、インバータチラー。
- 計測:t・kmあたりのエネルギー消費、庫内断熱前後の消費電力量。
5) オフィス・バックヤード
- 要点:空調・照明・IT機器の待機電力とBEMSによる自動制御。
- 対象例:高効率空調、センサー照明、サーバールームの空調最適化、スリープ設定徹底。
- 計測:延床面積あたり、席数あたりの消費量とピーク電力。
対象経費の整理とNGライン
- 主な対象:本体機器、付帯工事、制御機器、計測機器、設計・導入支援、運搬据付。
- 対象外になりがち:汎用土木・建築大改修、更新前提の保守費、通常更新と区別できない装飾・内装、中古品。
- 相見積:同等仕様で3者以上(調達困難な場合は理由書)。価格構成(本体・工事・諸経費)を分ける。
効果算定(一次エネルギー削減・費用対効果)
- 基準データ:直近12か月の使用実績(電力・ガス・燃料)。季節変動は基準化。
- 新旧比較:カタログ効率・COP・kW/台・台数・稼働時間を根拠化。
- 一次エネルギー換算:電力→原単位(GJ/kWh)、ガス・燃料→下限発熱量で換算。
- 費用対効果:削減量(kWh・GJ)×単価=年間削減額→回収年数・NPVを算定。
申請~採択~実績報告のフロー
- 案件設計:現状調査→更新案→効果試算→対象経費の切り分け。
- 見積・仕様確定:同等仕様で相見積、型式・能力・数量・工期を確定。
- 申請書作成:事業計画・効果算定シート・図面・見積・写真・スケジュール。
- 採択後発注:採択通知前の発注・着手は原則NG。
- 実績報告:納品書・検収書・支払記録・稼働写真・メーター値・計測ログ。
- 運用:月次で使用量をモニタリングし、目標未達時は運用改善。
不採択・減額の典型パターン
- 効果根拠が弱い:稼働時間・負荷率の仮定が恣意的、カタログ値の引用のみ。
- 価格の妥当性不足:相見積が同等仕様でない、費用内訳の不透明さ。
- 対象外費目混在:内装・建築費が混ざり、対象経費が膨らむ。
- スケジュール遅延:採択前着手や工期遅延で減額・不支給。
- 写真・証憑不足:ビフォー/アフター写真・銘板・型式写真が欠落。
チェックリスト
- 直近12か月の使用実績と稼働条件を整理した
- 新旧仕様・能力・稼働時間を根拠化した(カタログ・ログ)
- 一次エネルギー換算と回収年数を算定した
- 同等仕様で相見積(3者)を取得し、費用内訳を分解した
- 採択後着手・証憑保全・写真撮影の運用を定義した
FAQ
Q. 太陽光や蓄電池の自家消費は対象になりますか?
制度により扱いが異なります。省エネ(使用量削減)を評価する枠と、再エネ導入・ピークカットを評価する枠が分かれている場合があります。
Q. 中古機の導入は対象外ですか?
多くの制度で中古は対象外です。新品・型式の明記・銘板写真などで新規性を証明します。
Q. いつから発注してよい?
原則、採択通知日以降です。見切り発注は不支給リスクが高いため避けてください。
ご相談・支援メニュー
- 現状調査・効果試算(一次エネルギー換算・回収年数)
- 対象経費の切り分けと相見積の設計
- 申請書・図面・写真・証憑の一式整備
- モニタリング運用(BEMS/EMS導入支援)
相談してみる(無料) 関連:サービス|事例
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