業績が不安定な時期のリスケ交渉:準備と進め方
業績が不安定な時期のリスケ交渉:準備と進め方
資金ショートを避けつつ事業を立て直すための「返済条件見直し(リスケ)」実務。初動のポイント、銀行との対話設計、準備書類、複数行調整や据置・延長の組み立て方を整理します。
リスケ検討のシグナル(早期サイン)
- 月次資金繰り表で当座残がマイナス化する週が見え始めた
- 売上減・粗利率低下・回収遅延の同時発生
- 短期借入/カード/手形の借換頻度が上昇
- 税・社保・家賃など固定的支出の滞り兆候
銀行交渉の原則(やってよい/いけない)
- 正確・迅速・継続的な情報開示:直近試算表、資金繰り、受注・在庫・KPIを月次共有。
- 原因の特定と是正策:外部要因だけにせず、自社の打ち手と効果見込みを明示。
- “行間の公平性”:複数行がある場合、同歩調を基本に。特定行のみ極端に有利な条件にしない。
- やってはいけない:無断の約定違反、根拠のない楽観計画、他行への隠し条件提示。
資金繰り安定化の設計(12〜24か月)
- ベースライン作成:現行条件のままの月次資金繰り(売上/粗利/固定費/返済/一時金)。
- 改善パッケージ:単価見直し、原価削減、固定費圧縮、在庫回転短縮、与信・回収強化を時系列に。
- 資金手当レイヤー:据置、期限延長、運転枠増、在庫金融/ABL、前受・デポジット導入。
- 谷の平準化:売上の季節変動・税/賞与の一時金を別レーンで可視化し、最大谷間を算出。
準備書類とストーリー構成
- 1枚サマリー:現状、課題、対策、必要な条件見直し、見通し。
- 月次資金繰り(12〜24か月):ベースライン、改善後、リスケ後の3本。
- 事業計画:売上/粗利/KPI、在庫・回収・支払サイトの見直し。
- 債務一覧:借入残高、金利、返済条件、担保・保証、満期。
- 証憑:主要見積・契約、改善施策の進捗証跡。
条件見直しの主なオプション
- 元金据置:一定期間、利払いのみにしてキャッシュを回す。
- 期限延長(リスケ):返済期間を延ばし、月次返済額を下げる。
- 返済スキップ(スポット):一時的な資金ショック月の返済を後ろ倒し。
- 借換・条件変更:短期→長期化、金利・返済方式の見直し。
- 枠の付け替え:不稼働枠の解約・統合、運転枠の増枠。
金利減免・債務免除は一般にハードルが高く、事業再構築レベルの計画や第三者関与が前提になることが多いです。
実務の進め方(単独行/複数行/保証協会/政策金融)
- メイン行と素案共有:1枚サマリーと月次CF3本を提示し、素案レベルで意見をもらう。
- 複数行調整:同歩調の原則で条件案を擦り合わせ。メイン行の合意がレファレンスに。
- 保証協会付の扱い:条件変更の可否・手続・必要書類を早期に確認。
- 政策金融の活用:据置期間・長期化の選択肢。既存債務との役割分担を明確に。
- 締結・フォロー:条件変更契約後は、月次の予実・KPIの共有を継続。
よくあるNG
- 遅延後の駆け込み:延滞発生後は交渉余地が狭まる。予兆段階で着手。
- 根拠のないV字計画:受注・見積・価格改定の裏付けがない。
- 一行だけ特別扱い:他行との不公平は全体破綻の引き金に。
- 情報分断:会計・販売・在庫・購買のデータが合わず、信頼を失う。
チェックリスト
- 返済遅延前にメイン行へ相談した
- ベースライン/改善後/リスケ後の月次資金繰りを用意した
- 原因と対策を「数量・価格・効率」に分けて示した
- 債務一覧(条件・満期・担保・保証)を整理した
- 複数行は同歩調の原則で合意形成の道筋を描いた
FAQ
Q. 返済がどうしても間に合いません。まず何をする?
遅延前にメイン行へ連絡し、当月の資金繰り・不足額・対処案(据置・スキップ・前受等)を提示。無断遅延は厳禁です。
Q. リスケで信用情報はどうなる?新規借入は可能?
影響はケースによりますが、新規借入は厳しくなりがちです。月次の予実共有と改善進捗を継続すれば、条件緩和や再調達の道が開ける可能性があります。
Q. 金利引下げや元本免除は現実的?
一般にハードルが高く、抜本的再生計画や第三者関与が必要です。まずは据置・延長・返済方式の見直しから検討しましょう。
ご相談・支援メニュー
- 月次資金繰り(ベース/改善/リスケ後)の作成支援
- メイン行・複数行との交渉シナリオ設計
- 在庫・与信・価格の改善パッケージ設計と実行管理
- 条件変更契約後の予実/KPIレビュー運用
相談してみる(無料) 関連:サービス|事例
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