経営改善計画策定支援(405事業)の活用方法と実務ポイント

経営改善計画策定支援(405事業)の活用方法と実務ポイント

売上減や原価高、人手不足で収益が不安定——そんな時に有効なのが経営改善計画策定支援(いわゆる405事業)。本稿では、制度のポイント、計画の作り方、金融機関連携、運用のコツを実務目線でまとめます。

405事業とは(ねらいと効果)

  • ねらい:外部専門家の伴走で実行可能な経営改善計画を作り、収益力と資金繰りを立て直す。
  • 効果:課題の特定→打ち手の優先順位→KPIと数値計画→モニタリングの一連を定着。
  • ポイント:計画作成だけでなく、四半期レビューを通じた実行と見直しが肝。

対象・要件(概要)

  • 対象企業:売上・利益の悪化や資金繰り不安を抱える中小企業全般(詳細は制度要件による)。
  • 支援内容:現状診断、計画書作成、金融機関連携、進捗モニタリング。
  • 専門家:中小企業支援機関・認定支援機関・公的支援窓口などの登録者が関与。

どんな局面で使うと効果的か

  • 黒字化目前だが資金が先細り:価格・原価・与信・在庫を一体で見直し、週次CFと連動。
  • 成長投資後の利益圧迫:固定費・減価償却・人員構成を再設計。
  • 金融機関への説明強化:定量KPIと数値計画を材料に、条件見直しや追加枠の協議へ。
  • 承継/組織再編の前後:収益構造の再定義とコスト最適化を計画に織り込む。

経営改善計画の構成(雛形)

  1. 要約(1枚):現状、課題、打ち手の優先順位、KPI、収益・資金の見通し。
  2. 外部環境・内部分析:市場/競合/顧客、SKU・チャネル、コスト構造、与信・在庫・稼働。
  3. 改善パッケージ:数量・単価・原価・固定費・運転資本の打ち手を時系列で。
  4. KPI設計:受注、粗利率、在庫回転日数、回収/支払サイト、稼働率、解約率など。
  5. 数値計画:PL/BS/CF(12〜24か月)、感応度(90%/80%着地)を併記。
  6. 資金計画・金融要請:必要枠、返済条件、据置・延長の要否。
  7. 運用・ガバナンス:月次締め、レビュー会、権限規程、情報開示の頻度。

数値計画の作り方(PL/CF/BS)

  • PL:売上は「数量×単価」で、粗利は「配合/歩留り/稼働」を明確に。価格改定は発効月を定義。
  • CF:月次+週次の二層。最大谷間と手当(枠/リスケ/前受/在庫金融)を明示。
  • BS:在庫・売掛・買掛のターンをKPIと連動。運転資本ブリッジで増減要因を説明。
  • 感応度分析:売上−10%、原価+2pt、回収+10日 等のシナリオで耐性を確認。
  • モニタリング:四半期で見通し更新、差分の要因分解と打ち手の修正。

金融機関連携と条件協議

  1. 素案共有:メイン行に早期共有し、改善パッケージの実現性をすり合わせ。
  2. 必要枠の根拠:週次CFの最大谷間+安全余裕=必要運転枠を提示。
  3. 条件見直し:据置・期限延長・返済方式の最適化。複数行は同歩調で合意。
  4. 情報開示:月次で試算表・KPI・週次CFを共有。実行→検証→是正の継続が信頼を生む。

申請〜策定〜フォローの実務フロー

  1. 初期診断:財務3表・KPI・体制をレビュー、課題と優先順位を定義。
  2. 支援申請:必要書類(企業情報、支援計画、見積 等)を整備。
  3. 策定フェーズ:ヒアリング→分析→改善パッケージ→数値計画→金融素案。
  4. 合意・提出:経営陣と方針確定、主要行と素案共有。
  5. 実行・レビュー:月次運用、四半期レビュー(感応度・見通し更新)。

よくあるNGと回避策

  • 抽象的なスローガン:「販促強化」等で終わる → 数量/単価/効率のKPIに落とす。
  • PLだけでCFなし:資金ショックが見えない → 週次CFと谷間・手当を必ず併記。
  • 在庫・与信の盲点:粗利だけ注視して運転資本を放置 → 回収/支払サイト・在庫回転を是正。
  • 計画倒れ:権限・会議体・ダッシュボードがなくPDCAが回らない → 運用設計を先に決める。
  • 金融との分断:計画が交渉資料に繋がらない → 早期にメイン行と素案すり合わせ。

チェックリスト

  • 課題を「数量・単価・原価・固定費・運転資本」に分解した
  • KPI(受注/粗利率/在庫回転/回収・支払サイト)を定義した
  • PL/BS/CF(12〜24か月)と感応度分析を作成した
  • 週次CFの最大谷間と必要枠(+安全余裕)を算出した
  • 四半期レビューと月次開示の運用を決めた(会議体・権限)

FAQ

Q. 赤字でも申請・策定は可能?

可能です。むしろ改善パッケージと資金計画が明確であれば、金融機関との対話が進みやすくなります。

Q. 計画の期間はどれくらいが妥当?

一般に12〜24か月で、四半期ごとに見直す運用が実務的です。回収サイトが長い業種は24か月を推奨します。

Q. 支援を受ける際の社内体制は?

経営者+管理(経理)+販売/生産の小チームで臨み、週1回の短時間定例で意思決定とデータ提出を進めるとスムーズです。

ご相談・支援メニュー

  • 現状診断(財務・運転資本・KPI)と改善パッケージ設計
  • PL/BS/CF(12〜24か月)と感応度分析の作成
  • 週次CFに基づく必要枠算定と金融機関連携(素案作成)
  • 四半期レビュー運用(見通し更新・打ち手の是正)

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本記事は一般的な情報提供です。制度の詳細・運用・補助率や手続は年度・地域により異なります。適用前に最新の一次情報と専門家の助言をご確認ください。

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Shige