全体像：リスク別の担保マップ

所有権留保（動産売買）

• 趣旨：代金完済まで売主の所有権を留保し、未払時に目的物を回収。
• 条項例の要素：目的物の特定、危険負担、引渡しと検収、期限の利益喪失、解除・引揚手続、費用負担、立入の同意。
• 運用：納品書・シリアル・写真等で特定性を確保。分割払いは各回未払で解除可能とする明記。
• 注意：転売・加工・混和で特定性が薄れる場合は、債権譲渡や動産譲渡登記を併用。

債権譲渡（売掛・請負代金）

• 基本：債務者（=第三債務者）への通知または承諾で対抗要件を整備。電子通知は記録化。
• 将来債権：継続取引は「発生する売掛債権一切」を対象にし、二重譲渡対策として登記を検討。
• 禁止特約対策：相手方の譲渡禁止条項がある場合、事前の合意変更や譲渡先の限定で運用可能性を確保。
• 実務：テンプレ（譲渡契約／通知書／承諾書）を用意し、回収口座の指定までセットで運用。

動産譲渡登記・在庫担保化

• 対象：機械設備・車両・在庫（材料/製品）。
• 要点：目的物の表示・保管場所・表示方法（タグ/棚ラベル）・在庫増減時の置換条項。
• 在庫運用：定期残高確認、検査権限、滞留時の処分優先順位を契約化。
• 併用：ABL（売掛・在庫担保融資）や#59の短期資金策と整合を取る。

人的保証（連帯保証・極度額）

• 設計：保証人の範囲（代表者/関係会社）、極度額（上限）、対象債務（現在・将来）、期間、情報提供義務。
• 適正運用：保証人の財産・収入の合理的把握、保証の必要性・相当性の説明記録。
• 見直し：与信スコア改善時には保証縮減、逆に悪化時は担保追加や決済条件の厳格化。
• 注意：形式だけの一括連帯はトラブルの元。極度額・対象範囲・終了事由を必ず明記。

運用：契約条項・証拠化・発動フロー

よくある失敗と回避策

• 特定性不足：所有権留保の目的物が特定できず回収不能 → 型式・S/N・写真・配置図で特定性を確保。
• 通知漏れ：債権譲渡の第三債務者通知を怠り優先権を失う → 通知/承諾の受付記録を残す。
• 登記未整備：動産担保を契約だけで運用 → 登記・表示・検査まで一式で。
• 過剰保証：極度額や範囲が過大で紛争化 → 必要性・相当性の記録と定期見直し。

チェックリスト

• 所有権留保の対象特定（S/N・写真・配置）と解除・引揚手順が明文化されている
• 債権譲渡の通知/承諾と（必要に応じ）登記の実務が整備されている
• 動産担保の表示・検査・置換条項が契約と現場運用に落ちている
• 保証契約の極度額・範囲・期間と情報提供義務が明記されている
• 期日超過時の発動フロー（出荷停止→保全→法的措置）がテンプレ化されている
• 証憑・交渉ログが案件IDで一元管理されている

ご相談・支援メニュー

• 所有権留保・債権譲渡・動産担保・人的保証の条項テンプレ整備
• 在庫/機械の同定・表示設計と点検プロトコル
• 第三債務者通知・登記・回収口座指定の運用設計
• #58〜#64と連動した発動フローと証拠一元管理の構築

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