滞留在庫の現金化プログラム(値引・バンドル・委託販売・流動化)

滞留在庫の現金化プログラム(値引・バンドル・委託販売・流動化)

在庫は現金の仮置場。本稿では、ABC×年齢分析で可視化し、値引・バンドル・販路転換・委託販売・買取/流動化・部品転用・廃棄まで を優先順位とKPIで運用。価格ルール、承認権限、会計/税務、E2E連携(#59/#64)まで実務で落とし込みます。

全体像:在庫現金化の設計図

  1. 可視化:SKU別の在庫年齢(0-30/31-60/61-90/91-180/181+日)とABC分析をダッシュボード化。
  2. 優先順位:粗利×回転×陳腐化リスクでスコア化し、高リスクから着手
  3. 施策:値引→バンドル→販路転換→委託販売→買取/流動化→部品転用→廃棄の順で検討。
  4. 統制:価格ルールと承認権限、会計・税務処理、在庫・販売マスタの同日更新

可視化:ABC×在庫年齢と原因診断

ABC×在庫年齢

  • 売上(または粗利)寄与でA/B/Cに層別、各層の在庫金額を年齢帯でヒートマップ表示。
  • 閾値例:A=上位70%/B=次の20%/C=残り10%(粗利寄与で定義も可)。

原因診断(タグ付け)

  • 需要外れ、設計変更、品質問題、MOQ過大、販促未実施、季節外、返品滞留、保守用過多 等。
  • SKUに原因タグを付し、施策の選択と効果測定を容易化。

施策カタログ:7つの現金化レバー

レバー狙い対象SKU要点
① 値引販売短期現金化在庫年齢61日〜/A・B中心最低粗利%を下限に。期限・数量限定。
② バンドル/セット付加価値で粗利維持補完関係SKU親子SKUで価格設計、単品カニバリを回避。
③ 販路転換需要のある市場へ地域/チャネル偏在品BtoB→EC/アウトレット/業販 等へ移管。
④ 委託販売在庫圧縮大型/高額/季節品返品条件・損耗リスク・報酬率を契約化。
⑤ 買取/流動化即時現金化動きが鈍いB/C在庫買取業者・ABL(在庫担保)・ファクタリング連動。
⑥ 部品転用/再生原価回収故障/型落ち分解・再生・保守パーツ化、原価再配賦。
⑦ 廃棄/寄贈損失確定・管理コスト削減陳腐・破損税務・環境対応、二次流通流出防止。

値引・バンドルの価格ルール

  • 下限設定:最低粗利%(例:商品群ごとに10〜20%)とキャッシュ優先ラインを二重設定。
  • 期限・数量:「◯日まで」「◯個限定」で希少性を作り、値引拡散を防止。
  • バンドル設計:主力(A)+滞留(B/C)の組合せ割引。単品値崩れ回避のため、セット専用SKUを発番。
  • 可視化:値引の粗利影響キャッシュ創出額をダッシュボードに同時表示。

オペレーション:承認・販路・在庫同期

承認フロー

  • 値引率ライン(例:〜15%=部門長、〜30%=役員、30%超=経営会議)。
  • 委託/買取は契約テンプレ(返品条件・報酬・損耗責任・在庫同定)。

販路運用

  • 自社EC・アウトレット・業販・B2Bマーケットプレイスを在庫連携
  • チャネル毎の価格ポリシー(MAP/最低価格)と出荷条件を明文化。

在庫同期

  • 価格変更と同時にERP/EC/販売マスタ更新、在庫引当ロックで過売防止。
  • 委託は場所別在庫・ロット/シリアルで同定し、棚卸頻度を契約化。

会計・税務と内部統制

  • 評価減:純実現可能価額(NRV)に基づく簿価切下げ。販売計画と証憑を保管。
  • 委託販売:収益認識は販売時。受託者レポートに基づき計上。
  • 買取/流動化:売却損の処理、回収条件(リコース有無)の明確化。
  • 廃棄:社内稟議・写真・廃棄証明を案件IDで保存(#63)。

ダッシュボードとKPI

  • 在庫年齢構成:180日超割合、90日超金額。
  • 現金化KPI:現金化額、現金化率(施策対象在庫に対する)、在庫→現金リードタイム
  • 粗利影響:施策別粗利減少額と回収キャッシュの対比(キャッシュROI)。
  • 回転:DIOの改善幅、在庫回転率、在庫評価減の縮小額。

よくある失敗と回避策

  • 値引の常態化:参考価格が崩壊 → 期限・数量、セット専用SKUで隔離。
  • 販路カニバリ:EC値引が既存代理店を侵食 → チャネル別価格ポリシーを明文化。
  • 同定不備:委託在庫の紛失/損耗 → ロット/シリアル+棚卸契約+損耗責任を明記。
  • 会計遅延:価格改定と評価減が期ズレ → 発効日と会計連携を月次ロック。

チェックリスト

  • ABC×在庫年齢のヒートマップを週次更新している
  • 値引の下限粗利%承認権限が文書化されている
  • バンドルはセット専用SKUで運用し、単品価格を守っている
  • 委託/買取は契約テンプレ(返品・損耗・同定・棚卸)で統制している
  • 価格施策と会計(評価減/売却損)の発効日が一致している
  • 現金化KPI(現金化額・率・リードタイム)とDIO改善がダッシュボード化されている

FAQ

Q. どの順番で施策を打つべき?

粗利毀損の少ない順に、バンドル→販路転換→値引→委託→買取/流動化→部品転用→廃棄。A/Bランクは粗利維持策を優先、Cはスピードを優先します。

Q. 値引下限はどう決める?

商品群の最低粗利%と、キャッシュ創出が目的のキャッシュ下限(例:粗利5%でも◯日以内現金化なら許容)を二重で設定します。例外は期限付きで承認。

Q. 委託販売と買取の使い分けは?

価格維持・需要検証なら委託、即時現金化が最優先なら買取/流動化です。大型・高額・季節品は委託、動きの鈍いC在庫は買取が向きます。

ご相談・支援メニュー

  • ABC×在庫年齢ダッシュボード構築と原因タグ設計
  • 値引・バンドルの価格ルールと承認ワークフロー整備
  • 委託/買取契約テンプレ、在庫同定・棚卸プロトコル設計
  • #59資金/#64KPIと連動した現金化プログラムの運用伴走

相談してみる(無料) 関連: サービス事例

本記事は一般的な情報提供です。価格・契約・会計/税務の取扱いは個別事情で異なります。導入前に自社実態と最新の一次情報をご確認ください。

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Shige