案件ID×証跡一元化の実装(画面・ワークフロー・帳票テンプレ)

案件ID×証跡一元化の実装(画面・ワークフロー・帳票テンプレ)

回収を強くするのは“言った/言わない”を排除する設計。本稿では、契約・注文・変更・納品・検収・請求・入金・督促・保全の 証跡を案件IDで紐づけるためのデータモデル/ワークフロー/画面UI/帳票テンプレ/監査を、 #58〜#71の各実務とつながる形で即導入できるレベルまで落とし込みます(#63 電子化と連動)。

全体像:一元化の設計原則

  1. 唯一の真実(SSoT):案件IDを主キーに、契約→変更→納品→検収→請求→入金→督促→保全を一本のタイムラインで管理。
  2. “証拠ファースト”:請求や督促は証拠リンク必須(契約・PO・検収・ログ)。
  3. 最低限の標準化:ファイル命名・項目名・コード体系(値引/返品/RMA/相殺)を共通化(#63, #71)。
  4. 自動同期:入力は一度だけ。派生帳票は自動生成、会計仕訳は自動起票。

データモデル(エンティティとキー)

エンティティ主キー主要項目関連
案件(Case)CaseID得意先ID、案件名、契約形態(売買/請負/準委任/サブスク)、担当、通貨契約/PO/納品/検収/請求/入金/督促/保全
契約(Contract)ContractID相手先、条項版、価格式、サイト、保証/担保、仲裁/管轄CaseIDにFK、改定履歴
発注/変更(PO/CO)POID / COID品目/役務、数量、単価、納期、変更理由CaseID, ContractID
納品/実績(Delivery/Worklog)DLV_ID / LOG_ID品目/成果物、数量/時間、ロット/シリアル、証跡ファイルPOID, CaseID
検収(Acceptance)ACP_ID受入基準、結果、みなし受入期限、責任分界DLV_ID, CaseID
請求(Invoice)INV_ID金額、税、値引コード、支払条件、支払期日ACP_ID, CaseID
入金(Receipt)RCPT_ID金額、差額理由、手数料、入金方法INV_ID, CaseID
督促/保全(Dunning/Sec)DUN_ID / SEC_IDステータス、文書リンク(内容証明/合意/公正証書)、期日INV_ID, CaseID

標準ワークフロー(E2E)

  1. 契約登録:MSA/個別契約をテンプレから発行、条項版を記録(#71)。
  2. 発注/変更:PO/変更指示書(#63)を発行、案件IDに紐付け。
  3. 納品/実績:納品書・作業ログをアップロード、ロット/シリアル/写真で同定(#65)。
  4. 検収:明示検収 or みなし受入(#70)。不合格は原因と是正期限を記録。
  5. 請求:検収承認をトリガーに自動起票。相殺/値引コードはコード表から選択。
  6. 入金消込:銀行明細を自動照合。差額の理由(手数料/控除)を選択し、異議申立へ。
  7. 督促〜保全:期日当日→+2日→+7日→+14日のテンプレ(#66)を自動生成・送付・記録。

画面設計(UIコンポーネント案)

① 案件ダッシュボード

  • ヘッダ:案件名・得意先・与信ランク・枠使用率。
  • 中央:証跡タイムライン(契約→PO→納品→検収→請求→入金→督促)。
  • 右側:KPI(DSO、期限超過、請求未送付、回収見込み)。

② 文書ビューワ

  • PDFプレビュー+ハイライト(契約条項、検収条件、価格式)。
  • 関連文書の相互リンク(請求→該当検収→該当納品)。

③ 入金消込画面

  • 銀行明細の自動マッチ率表示、差額理由のドロップダウン(手数料/相殺/値引/誤入金)。
  • 未消込は自動督促の対象フラグ。

④ テンプレセンター

  • 契約・変更・検収依頼・請求・督促・内容証明・分納合意・公正証書申出書の雛形(#66, #71)。
  • 会社ロゴ・社判・差出人情報の自動差し込み。

帳票テンプレ(契約〜回収)

帳票必須項目証跡リンク
変更指示書変更点・価格/納期影響・発効日・承認者契約・PO・見積・メール
検収依頼書合否基準・回答期限・みなし受入日納品書・成果物一式
請求書案件ID・PO/検収番号・支払期日・相殺/値引コード検収・契約
督促状(停止予告)請求番号・金額・期日・停止日請求・契約の遅延条項
内容証明事実特定・履行期限・違約措置請求・取引停止根拠
分納合意支払予定表・期限利益喪失・遅延損害金・担保請求・入金履歴

連携:会計/販売/在庫/収納の統合

  • 会計:請求起票で売掛計上、入金で消込。相殺や値引はコード別補助科目で可視化。
  • 販売/在庫:納品・検収に同期して在庫・原価を更新、C在庫は#68の現金化施策へ。
  • 収納:口座振替/クレカ/コンビニ/海外送金をゲートウェイで集約、トランザクションIDを案件に紐付け。
  • 外部与信:遅延・限度超過は出荷判定へフィードバック(#58)。

権限・監査ログ・保存ポリシー

  • 権限:登録/承認/閲覧を分離。金額帯で承認レベル(例:〜300万円=部長、〜1億円=役員)。
  • 監査ログ:誰が/いつ/何を変更したか。帳票PDFは改訂版管理(版数・理由)。
  • 保存:契約・検収・請求・入金・督促は7〜10年。内容証明や公正証書は恒久保管。
  • 個人情報:名寄せキーをハッシュ化、アクセスは最小権限

よくある失敗と回避策

  • 二重入力:販売・会計・収納で別登録 → 案件IDを共通キーに一元入力。
  • ファイル散逸:メール添付のまま放置 → テンプレセンターから発行し自動保管。
  • 検収遅延:合否フロー不在 → みなし受入と期限アラート(#70)。
  • 相殺の野放し:根拠不明の控除 → コード選択必須+月次ネットティング(#69)。

チェックリスト

  • 案件IDが契約〜回収の全証跡に付与されている
  • 証跡タイムラインで1分以内に根拠書類へ到達できる
  • 請求起票は検収承認をトリガーに自動化されている
  • 入金消込と督促が自動アラートで回っている
  • 相殺/値引はコード体系で統制されている
  • 権限・監査ログ・保存年限が規程化されている

FAQ

Q. 案件IDは既存システムにどう統合する?

最小改修は「外部キーとして案件IDを追加」し、請求番号・検収番号・収納トランザクションIDに逆引きを持たせること。段階的に画面と帳票へ露出させます。

Q. 電子帳簿保存法やインボイス制度への対応は?

検索要件(年月日・金額・取引先)+真実性/可視性を満たす構成にします。案件IDは検索キーに、改訂版管理とタイムスタンプで真正性を担保します(#63)。

Q. Excel中心でも始められる?

はい。まずは命名規則と案件台帳(CaseID・契約・PO・検収・請求・入金・リンク)を共有ドライブで運用。並走でRPA/連携を追加します。

ご相談・支援メニュー

  • 案件IDデータモデル設計とコード体系(値引/相殺/RMA/返品)標準化
  • 証跡タイムラインUI・テンプレセンター・自動起票/督促の構築
  • 会計/販売/在庫/収納のAPI連携と監査ログ・保存規程の整備
  • #58〜#71と連動するE2E回収KPI(DSO/期限超過/相殺率)のダッシュボード実装

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本記事は一般的な情報提供です。法令・社内規程・システム構成に応じて適切な設計が異なります。導入前に最新の一次情報と専門家の助言をご確認ください。

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Shige