全体像：リスクの分解と設計図

1. カウンターパーティ：KYC・制裁・AML・政治カントリー。
2. 決済/与信：L/C/保証/前受・限度額・担保（SBLC/担保権）。
3. 物流/書類：船積書類一致・船積期限・提示期限・保険条件。
4. 法域/紛争：準拠法・裁判管轄/仲裁・強制執行可能性。
5. 為替：建値通貨・ヘッジ・インボイス割増（サーチャージ）。

海外与信ポリシー（KYC/制裁/与信枠）

• KYC：登記簿・実質的支配者（UBO）・納税番号・取引実績・銀行リファレンス。
• 制裁/AML：制裁リスト・PEP・高リスク国・貨物用途（デュアルユース）をチェック。
• 枠・条件：国×顧客×商品で枠を設定。担保/決済条件（前受・L/C・SBLC）を枠連動。
• EWS：入金遅延・端数化・為替ショック・政変ニュースを監視（#73）。

決済手段の比較（L/C・SBLC・D/P・D/A・Open）

荷為替書類とミス防止（書類一致の原則）

• 主要書類：インボイス、パッキング、船荷証券（B/L）、保険証券、原産地証明、検査証。
• 一致の原則：商業書類の記載（品名/数量/船名/日付）がL/C条件と完全一致していること。
• よくある差異：商品名略称/スペル、数量端数、船積/提出期限、保険条件（Institute Clauses）。
• 防止策：出荷前T–3〜5日で書類ドラフト回覧、ディスクレ控除の合意、船社/保険との定型化。

Incoterms®と危険移転・費用負担

輸出保険・担保・為替ヘッジ

• 輸出保険：買主倒産/政治リスク/延滞をカバー。保険付与を契約の前提条件にする運用が安全。
• 担保：SBLC/バンク保証、前受金、輸入者側の留置/抵当の可否を事前確認。
• 為替：建値通貨の選定、フォワード/オプション、インボイスの為替条項（急変時の再協議）。

不払い時の国際回収フロー（現地対応/仲裁/裁判）

1. 初動：入金確認→プロテスト/ディマンド→出荷差止・B/Lコントロール。
2. 現地回収：代理人通知、第三債務者通知（輸入港/フォワーダー/銀行）。
3. 仲裁/裁判：契約条項に従い仲裁（ICC/SIAC/LCIA等）または現地裁判。準拠法・裁判管轄・言語を条項で固定。
4. 強制執行：現地の執行制度を事前調査（差押/仮差押/保全の可否・保証金）。

各国の相殺慣行と控除ルール

• 欧州：契約/商慣習に基づく控除が一般的。“No set-off”条項の効力は国により差。
• 北米：チャージバック文化が強い業界あり（小売/EC）。承認ワークフローと当月ネットティングを徹底。
• アジア：政府/国営企業を含む場合は公的手続や支払承認の階層に注意。
• 中東/アフリカ：為替規制/外貨不足に伴う送金遅延。L/C・SBLCや前受で保全。

条項テンプレ（仲裁・準拠法・L/C条件）

【準拠法・裁判管轄】
本契約は{{準拠法}}に準拠し、{{裁判地}}の専属的管轄裁判所を合意する。
      

【仲裁】
本契約に関し紛争が生じた場合、{{仲裁機関}}の仲裁規則に従い、{{仲裁地}}において、言語を{{言語}}として最終的に解決する。
      

よくある失敗と回避策

• “L/Cだから安心”：書類相違で支払不履行 → T–5書類レビューを標準に。
• Incoterms®の誤解：所有権移転と危険移転の混同 → 契約で所有権・引渡し時点を別明記。
• 為替急変：建値固定で損失 → ヘッジ＋サーチャージ条項で緩衝。
• 相殺の野放し：無限の控除 → 当月ネットティング＋根拠資料＋承認番号必須。
• 準拠法/管轄未定：係争で不利 → 初回契約で仲裁/管轄を確定。

チェックリスト

• KYC/制裁チェックと国別リスクの台帳化
• 決済手段はリスク別マトリクスで標準化（前受/L/C/SBLC/D/P/D/A）
• Incoterms®とB/Lコントロールの整合
• 輸出保険・SBLC・保証で担保層を確保
• 準拠法・仲裁/管轄・言語を契約で確定
• 不払い時の現地代理人リストと保全オプションを事前に整備

ご相談・支援メニュー

• 国別リスク基準・決済手段マトリクスの設計（L/C/SBLC/D/P/D/A）
• Incoterms®・B/Lコントロール・書類一致運用の標準化
• 輸出保険/保証・為替ヘッジ・サーチャージ条項の導入支援
• 準拠法/仲裁/管轄条項テンプレ・国際回収フローの整備

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